至宝の名より[中編]




幼きころの懐かしい記憶。

「・・・俺の大事な宝を教えてやろう。」
「たから?」
「そうだ、大事なときだけその名を呼ぶことを許そう。俺は―彩輝だ。」

そういって幼きころに二つ名を教えてもらったっけ、

大事なときってどんなとき?
私はそれが不思議で、いつ呼べばいいのかわからず、いまだに六合。と呼んでいる。


私は、気づけばその父上の式に心を奪われていた。

気がついたら気になっていた。

ずっと、ずっと、
きっと生まれてあなたに名をもらったときから。

惹かれていたの。


ねぇ、六合。
いつ、あなたを彩輝と呼べるのかしら?


私は、気がつけば16になっていた。



起きろ。でないと天貴が困る。≫

朝は、天一か朱雀が起こしてくれる。彼らは父上から私の世話係りにと言われていた。

六合も世話係り。


けど、六合は簀子にいるだけだった。


そう、六合は本当は私のそばより違う人の傍に行きたいんだよね?


いつだっただろう、私がようやく物事を理解できる年になって、

ようやく彼が父上の式だとしって・・・


そのくらいだった。


「六合、少し出雲にいってきてくれないかな?」

父上の願いを聞き入れて六合は白虎の風にまかれていってしまう。

大抵そういう時は青龍がついてくれる。


はじめこそ、青龍が苦手だったが、今ではよき家族だ。

「おい、単衣一枚で外に出るな。」

月が見たくてでたときも、
眠れないときも、

私が彼を思って出雲を見ているときも青龍はただ黙ってそばにいた。



聞いた話によると、私についてくれている神将は父上が始めは頼んだけど、今では自主的についてくれているらしい。


私は、幼きころより陰陽術を詰め込まれていた。


女でありながらここの後継だと言われていた。

もちろん、それが私にとって一番の目標だったからそれはよかった



でも、私が後継にならなかったら・・・神将が自由になれば


彼は出雲にいくのでは?


風音に会いに行くのでは?


止めて。
私は・・・六合が・・・

彩輝が・・・好きなのに。


一方通行なの・・・。


風音が、私より早く生まれて。
私より早く六合にあって・・・


ひどく悔しい。



私の思いは


青龍と天一と朱雀だけが知っている。


彼らは口外しない。


私は、この恋をあきらめたほうがいいと思う。


諦めるには・・・。


「結婚するしかないわよね」

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