4.悪夢と現実と信頼と
精神的に疲れがたまったのか、そのまま部屋で寝てしまった。
をそのまま抱きしめていた太裳だったが、
そろそろ、ほかの神将がきてしまうだろう。と思い、敷いてあった茵に寝かせた。
正直、うれしかった。この主は青龍にばかり頼るから。
こういうとき、自分だけを頼ってくれるととてもうれしい気持ちがあった。
同時に、青龍から奪ってやろう。などという考えもでてきて、軽く首を振った。
それは、だめだと自分に歯止めをかける。
この少女を愛していても、この少女の想い人は青龍なのだ。
「そろそろ、自分の気持ちにけじめをつけるべきなのでしょうか・・・。」
苦笑しながら小さく呟くと、部屋を覆った結界を解いた。
結界をといてからしばらくすると、勾陣が部屋にと入ってきた。
「自分の気持ちを抑えられないといった顔つきだな。」
「さて、なんのことでしょうか?」
そういって、苦笑すると、様を頼みます。とだけいい異界へと戻る。
部屋に残った勾陣は、様子のおかしくなった主をみて、かるく頭をなでた。
「私は、いま私たちは晴明でもなく、昌浩でもない。ほかでもないだからこそ仕えているんだ」
勾陣はそういうと、隠形をした。
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夢・・・これは夢なの。
わかっている・・・。
だけど・・・。
そこは、いつもの安倍邸だ。しかし、いつもいる神将たちは、声を呼びかけても届かない。
最初は、太陰だった。
「たい・・」
「せーめー。これのことでしょ!あったわよ。」
簀子を顕現しながら、おじい様のもとに。・・・晴明のもとにといってしまう太陰。
そしてその近くにいた玄武に話をかけようとする。
「玄武・・・」
「これ!太陰!そんなに振り回すとあぶないではないか!」
どうして・・・?
「天后!天一!朱雀!」
呼びかけても、答えず晴明のもとへと集う。神将たち
空から白虎がやってくる。するとこちらに向かって歩いてきた。
私はほっとするつかの間、白虎は私に目もくれずに昌浩のところへといってしまう。
「どう・・・して?」
六合も、勾陣も、太裳も、天空もそして紅蓮も。
みんなみんな行ってしまう。
ヒトリハ イヤ ナノニ…
「彩輝!慧斗!」
一生懸命二つ名を呼んでも、答えてくれない。
「燈翠!翁!」
唯一悩みをしっている二人もが私を見てくれない。
「紅蓮!」
必死に必死になって叫んでも。答えてくれない。
最後にうつるのは、愛しい人の姿。
「宵藍――!」
ようやく宵藍が振り返ると宵藍はいつものように微笑んではくれなくて
いつものように眉間にしわをよせている雰囲気ではなく
明らかに怖い顔をし、
「お前ごときがその名を呼ぶな!」
とひどく悲しい。
残酷な。
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閉め切った障子から夕焼けのあかりが差し込んでいた。
体を起こすと、自分の異変に気づいた。
大量の汗と、そして頬を伝う涙と。
とても恐ろしい夢だった。
「怖い夢でもみたのか?」
ふと、横を見ると、いつものようにそばに居てくれる宵藍の姿があった。
「宵藍・・・。」
安心した。きちんと私をみてくれると。
けど、自分のこの醜い心をしられたくなくて
口を閉ざす。
出てくるのは、いつまでも止まらない涙だけ。
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青龍は、晴明にのことをいろいろと問いただされていた。
「ほう・・・。安心したぞ。わしの後をしっかりと昌浩が継いでくれて。そして新たにすばらしい主が、お前たちについていてくれるのだからな。」
「・・・・。」
「ほれほれ、昔みたいに無口になっとるぞ。とはいっても儂としては昔という感覚はないがな。」
というとにこりと微笑む晴明。
ふと、脳内に宵藍と。よぶ愛しい少女の声が聞こえた。
「!??」
ふと気配が消えたと思いあわてるが、玄武が近くにきた
「太裳がの部屋に結界を張ったようだな。またなにかあったのだろうか。」
また、というのは昔屋敷から消え、天空と太裳のもとに。異界にといった主のこと。
そのときのことでさえ太裳も、天空も教えてくれなかった。
「ほぉ。昌浩や、お前は気づいただろう?」
「じい様・・・。でもこれは、俺やじい様が気づいても、神将たちが気づかなければ意味のないことでしょう?」
というと晴明は十八になった昌浩の頭をなでる。
「じい様。俺十八なんですよ!?」
「孫はいつまでたってもかわいい孫だからな。」
というとそばに控えていた神将たちは微笑んだ。
心にそれぞれ、今の主のことを思いながら。
青龍は、結界が解かれてからも、しばらくは行かなかった。
勾陣がそばに控えていたから。
それから一刻もしたあたりだった。
なにか、胸騒ぎを感じ、のところにいくと。
必死に神将たちの名を呼んでいるがいた。
寝ている。でもうなされている。
「さ・・・き・・・けい・・・ぐれ・・・」
の頬に涙が伝う。
「・・・。」
「しょ・・・ら」
すると、ぼーとしてが目を覚ました。
毎回寝起きはぼーとしているが、今回はなにかとても引っかかった。
ただ、青龍は、を抱きしめるしかできなかった。