3.変わることのない誓いを
居間にとつくと、綺麗に2つ、そしてその前に二つ向き合うように円座が敷かれていた。
神将たちは後ろにと顕現している。
「それにしても、千年たって変わったところはあるけど、家はそう変わってないんだ」
「あぁ。台所とか風呂とかいろいろ変わりはしたが、家の配置はあまり手を加えてはなかったな」
と昌浩が部屋を眺めていると、勾陣が答える。
「それでは、改めまして、安倍昌賢と申します。あいにくと妻はこの家には滞在できない身でいないのです。」
「そういえば、お前の母親については、貴船の祭神は説明をしたのだろうか?」
「んー。さぁ?意外と抜けてるところあるからね高淤神は。」
紅蓮の問いかけには首をかしげながら答えた
すると、晴明様が不思議そうにしてきいてきた
「昌賢殿の妻ということは殿の母親というところか」
「どうぞ、呼び捨てで、かの有名な晴明様に殿など呼ばれては実が固まってしまいます」
「それはそうだろう。三流陰陽師ごときが晴明に敬称などつけられてはな。」
青龍がぐさりと直球で語る。青龍は、の後ろの壁に寄りかかり、晴明と昌浩の顔を見ている。
その横にずらりと神将たちが並んでいるんだけど、この部屋人口密度高いな。
と考えながら、にこりと微笑んで私は口にした
「私のこともどうぞとおよびください。晴明様。昌浩様」
「俺も様はいらないよ。」
「ふむ。考えてみれば、わしらのずっとずっと後の孫なのだから。じい様でかまわないとおもうんじゃが」
「まぁ・・・。では昌浩とおじい様で。」
と和やかに話を進めていく。
自分の母親のこと。どこまで安倍家が術を失ったかということ。
「ふむ、大体はわかった。術についてはそうだの、昌賢も一緒に学べばいいだろう」
「はい、では。会社にしばらく有休をもらいます。では早速電話を」
と昌浩が電話ってなに?ときいて紅蓮がそれに答えていた。
「それにしても、ずいぶんと神将たちが変わったの。」
「うん、俺つい最近、ようやく青龍に認めてもらって次期主だけど。ぜんぜんちがう。」
というと、青龍は苦笑していた。ほかの神将たちは微笑んでいたり、苦笑していたりとさまざまだ。
「どうやら、千年後は紅蓮も宵藍も仲がよいみたいだしの」
「仲はよくないぞ。晴明。しょっちゅう喧嘩をしている。」
玄武がすかさず口を挟む。
「そうよー。まぁ、昔よりは減ったと思うわ。だって私騰蛇に近づいても怖いって思わなくなったし。」
と太陰がいうと、隣で白虎が太陰の頭をなでる。
「ほほぉ。それはよいことだな。あぁ、そうそう、昌浩とわしの寝場所はあるのだろうか?」
「空き部屋がありますから。天一、天后。軽くでいいから掃除してきて。」
「承知いたしました。」
「えぇ、それでは、晴明様、昌浩様、また後ほど。」
というと天一と天后は、居間から出て行った。
もじもじしていた朱雀が1分もしないうちに天一を追った。
「そうね・・・紅蓮、玄武、太陰。昌浩にしばらく付いて。」
「わかった。しかし、忘れるな。今現在の主は、。お前だ。」
「わかってる」
「べ、べつに俺に護衛つけなくても。大丈夫だよ!」
「昌浩。の好意に甘えなさい。どうせ、ここ未来の地で、わしらの知識が追いついていけるわけがないのだ。」
そういって微笑む晴明を眺めていた青龍。
神将たちにとって、晴明は一番はじめの主だ。今は私が主だけど、やはり、勝てないな。と思ってしまう。
「では、おじい様に、六合と白虎を。」
「うむ。しばらく世話になる。」
そういって微笑む晴明をただにこりと微笑んで、とりあえず、やることがあるので、といい自室にと戻った。
自室のふすまをパタンと閉めるとそのまま床にすっと腰を降ろす。
案内は六合や紅蓮たち神将に任せたし、きっと未来でのことも教えるだろう。
私はただ、陰陽術を学べばいい。なのに。どうしても、思ってしまう。
勝てない。と。
べつに比べるつもりも、比べられたくもないのに、自ら、比べてしまうのだ。
どうしても、家族を、神将たちが大切だから。
とられたくない。なんて。
「わがままな子供みたい。」
晴明も昌浩もいい人だってわかるのに。ね。
私は醜い。こんなんで女神を継げるのだろうか。
大きな懐もないのに。
人間でも、神でも。
半分だから。
とても辛いし切ない。
「また貴女は、難しいことを考えていらっしゃいますね。」
「太裳・・・。」
すっと、隠形していた太裳が顕現する。
どうやら、私の後を追ってきたらしい。
「ほかのみんなは?」
「晴明様と昌浩様のもとでここでのことを教えております。そうですね。結界を張っておきましょう。」
そういって、太裳は、私の部屋に結界を張った。防音のための。
太裳と天空は、私のこの悩みをしっているから。
「さて、これでいいでしょう。青龍もしばらくこないですから、貴女とのことを根掘り葉掘り問いただされていましたから。」
「太裳・・・。」
「二人だけです。貴女から頂いた名で呼んでも大丈夫ですよ。」
闘将には、みな、晴明が名づけた名がある。
そして、また太裳には、がつけた名がある。
そのつけた時こそ、この悩みを打ち明けたときだ。
「燈翠・・・私、醜い。」
ひすいと。優しく照らし出す燈、のように誘う翠の髪
青磁色のそれは、光によって、照らされると翠のように見えた。
「大丈夫です。貴女は醜くなんてありません。私が保障いたします。不安になっているだけなのですから。それに騰蛇もおっしゃったでしょう?今の主は貴女なのだと。」
優しく髪をなでてくれる。彼の手が好きだ。
「よほどそれほど不安なのは。やはり青龍が晴明様のことを誰よりも身近に控えていたと聞いたからですか?」
青龍が口をあけて、晴明様たちをぼーと眺めていたあの貴船のときに太裳が教えてくれたのだ。
珍しい顔をするものだ。と。
「そうかもしれない。でも、私は・・・」
「たとえ、晴明様側に青龍がついたとしても、私は貴女のそばに居ると約束いたしましょう。」
彼の言葉は私を優しく照らしてくれる。
だから甘えてしまうのだ。
私はひどく弱いから。