10.人間の身体

安倍邸につくと、早々に神将たちが私の周りを囲み、
おじい様と昌浩、そして父さんが心配そうにして顔を覗き込む。

私は、瘴気に取り込まれて、体調が悪化した。
清めの月の力も今はなく。ただの人間と化した私はひどく脆い。

「これは・・・ひどい瘴気だ・・・」
「はい・・・あっちはどんな状況だったんだ?」

昌浩が神将に問うと、天后が口を開く。

「月の神殿は血で染まり、瘴気と邪気、妖気あれは、妖の住処のようでした。月の女神は・・」
「結晶となり、骸を隠しておいでだった。が触れたとたん、形見を残し消滅した」

天后が言いづらそうにするのを勾陣が続ける。
そんな、と父さんは、その場を立ち去ってしまった。
父さんは、母様を愛していたから。

「そんな・・・」

天一が、驚愕の声を上げると朱雀は抱きとめる。
私の中の瘴気はどんどん私を蝕んでいく。

「この・・・声・・・このいっ・・・!!」

瘴気を払う術は、口にしようとすると、気持ち悪い。
口から瘴気がでている。

「これはいかん!」
!」

宵藍の声、神将の声が聞こえる。意識が・・・・遠のいていく。


・・・・・・・・・・・

の中に入りこんだ瘴気は計り知れないものだ、
いつもなら、神気となる月の力が清浄となして、払われる。

これでは、は徒人だ・・・。
月の力がない、神気が消滅した今となっては、神の眷属から名を消し、
人となってしまった。

晴明が瘴気を払う言霊を噤む

「この声は我が声にあらじ。この声は、神の声。
まがものよ、禍者よ、呪いの息を打ち祓う、この息は神の御息。
この身を縛る禍つ鎖を打ち砕く、呪いの息を打ち破る風の剣。
妖気(まがもの)に誘うものは、利剣を抜き放ち打ち祓うものなり 」

昌浩も、同じように、の周りに結界をはり、
結界の中に霊気を保つ術をかける

「謹請、甲弓山鬼大神。此座 御降臨し、邪気悪気を縛り給え」

の顔色が良くなっていく一方で、俺たちは
主との契約の一部を失われたことに危機感を抱いていた。

『神気、霊力をもって、この力のすべてを、世のために使う。』

神気・・・それは、幼い頃から使い慣れているが利用している。
つかえば力は何倍にも跳ね上がる。疲れこそたまりはするものの
その強さは晴明や昌浩を上回った。

しかし今はどうだろう、昌浩や晴明よりも上回る見鬼と霊力をもつが
平安よりも術の数が減り、いまこうして晴明と昌浩を師として動いている。

もしや・・・

「高淤神の神は・・・予知していた?」



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