1.千年の間の時を越えて



朝目が覚めたら、部屋に日が差し始めていた同時刻、貴船の祭神が安倍昌浩の部屋にとやってきていた。

昌浩は、十八になっており、少年の面影から、青年のそれに少しずつ成長していっていた。
陰陽師としての力も経験もだいぶつき、陰陽生になっていた。
そして、晴明の式である十二神将全員に時期主と認めてもらった。
とはいえ、認めてもらったのは、七日もたっていないのだが。

経験がついた昌浩は、高淤の祭神がきたと同時に目を覚ました。

「おはようございます高淤の神。」
その言葉をきき、目を覚ました物の怪はゲッと声をだし、
高淤の祭神を睨む。

『そのように睨まずともいいだろう。』
「高淤神がきていいことがあるほうのことが不気味だ。」

となんとも失礼気回りないことをいい。昌浩は物の怪の尻尾をつかみ
抱き上げる。

「もっくん失礼だろ。すみません高淤の神。今日はじい様に用事でしょうか?」
『晴明もそうだが、お前にも用がある。そこで聞いている青龍よ、昼にでも晴明と昌浩をつれて貴船にくるように伝えろ。』

いつから青龍がいたのかはわからない物の怪だが、明らかに不機嫌そうにして眉間にしわをよせている。

「青龍。じい様に伝えてきて。きっと部屋でまっているだろうから。」
「ふん。」

といいすぐにでも隠形していってしまった。
青龍は認めたとはいえやはり騰蛇である紅蓮のまではピリピリとしている




ひとまず上半身を起こし、肩を左右に鳴らし腕を上へと伸ばした。
「んー。」
物の怪が狩衣を口にくわえると、昌浩の近くにそれを置いた。
「ありがとうもっくん。」
「いや。彰子がきたな。」

と簀子をみやると、予想していたように彰子がくる。
「おはよう昌浩。朝餉の支度ができたから起こしにきたのだけど。」
「着替えたらすぐに行くよ。」




彰子が先に朝餉にといくときに天一と朱雀が顕現する。

「おはようございます昌浩様。晴明さまがお呼びです。」
「朝餉は食べてからでいいらしい。」

「わかったありがとう。天一。朱雀。」
「いえ、それでは」

と隠形し主の下へともどる神将を見送り着替える。




朝餉をたべ晴明の部屋へと向かえば、すぐに貴船へといくぞといい白虎の風で向かった晴明と昌浩は、膨大な神気とともに現れる貴船の神を呼んだ。

「高淤の神。」
『来たか』

というと、高淤の神は晴明と昌浩を近くへと並ばせた。
『お前たちに千年後の未来に一月か二月ほど、いってもらう』

「は?それはどういうことですかな?」
晴明が問うと、高淤の神は未来についたときにこの高淤から聞けとだけいった



『平安の地にいる神将たちは未来にといるため、連れて行くことができない。まぁあちらの貴船で待機させているだろうからあまり心配するな。』
というと、一緒についてきた物の怪と青龍が不機嫌そうにする。
「高淤神。危険なことなのか。未来にわざわざ飛ばしてどうするつもりだ!」
物の怪がくわっと牙をむく。
「紅蓮。やめなよ。大丈夫だよ向こうにも紅蓮たちはいるんだろう?それにね。千年後はどうなっているんだろうとか考えれば楽しいよ?それに期限付きみたいだし。」
旅行みたいなものだよ。という昌浩にしぶしぶと納得したようだ。

そして次の瞬間。
昌浩と晴明は未来の貴船へと飛ばされたのだった。




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現代の貴船に、十二神将全員をつれて来いと今朝、現代の貴船の祭神に言われたは、彩雲国で失った神気もだいぶ取り戻し、安定した生活を送っていた。
最近は目立つ妖がいないので、基本的に人間らしい生活だった。

そして唐突に朝我が家に貴船の神がきたのだ。
それも異界に飛ばされたときのような愉快そうな顔で。

そして、神将たちをつれて、貴船にいるわけなのだが

「わざわざ異界にいる天空たちまでこなければいけない大切な用事なのかな?」
「だと思います。しかし、最近は貴船で神将がそろうことも多いですね。水鏡を通しての場合がいままででしたが。」

と太裳が返事を返すと、高淤の神がいつもの場所にすっと舞い降りた。


『来たな。』
といい、高淤の神は、にこっりと笑いながらいう。そしてを手招きすると微笑む

。お前先日誕生日だっただろう。』
「は?はい。まぁ18になりました。」

『お前。前にいってただろう、きちんと陰陽術を学びたいってな。だからな。呼んでおいた。』
「は?」

というと同時にうわぁああああああああという叫び声が本宮の方から聞こえた。
高淤の神はここで神将たちと待て、とだけいい本宮の方へいってしまった。


と神将たちは互いに顔を見合わせ首をかしげた。




本宮に晴明が床に現れ、昌浩は本宮の天井から床にと落ちた。
不意打ちだった昌浩はおもわず叫び声をあげてしまった。

「これ昌浩。うるさいぞ。」
「じ、じい様。いえ、いきなり下におちるとは思っていなかったもので」
「昌浩や。じい様は悲しい。うう悲しいぞ。『久しいな晴明。昌浩』」

晴明のからかいは貴船の祭神によって阻まれた。
すると晴明はこちらは千年後だったか。と思い出し貴船の祭神に頭を下げる。
「千年ぶりといっておいたほうがいいのでしょうかな。高淤の神よ。」
「え。あ。お、お久しぶりです。」
と続けていう昌浩に笑い。
やはりお前は面白いなといい。近くにと腰を下ろした。



こちらに呼んだ説明をはじめる。
『第一にお前たちをここに呼んだのは、一人の少女の願いからだ。』
「少女?」
昌浩が首をかしげる。

『名を。安倍。晴明と昌浩の直径の血族だ。』
「というと、わしにとってはだいぶ歳のかけ離れた孫ということになりますな。昌浩にいえるが」
「えぇ。俺、十八にして孫が・・・」

というと高淤の神は笑ってしまった。

一通り、話を済ませると。昌浩は言われたことをまとめた。

「つまり、俺とじい様は、安倍に陰陽師が減って、教えるひとがいないから。今の神将たちの主であるさんに教えろってことですね一月か二月で。その期限を超えるとあちらで俺たちの時間が止まっているのが動き出してしまうと」

貴船の神は、昌浩たちを未来へとおくるとはいったが実際にはあちらからこちらに飛ぶさいに昌浩たちに時間をかけたのだ。
だから、その間は、昌浩と晴明が起きた傷などはもどれば全部消えているという寸法だ。あちらでは時間が流れていないということらしい。

『まぁ、実際にあってみろ。それに気になるだろう?神将たちがこの千年でどう変わったかを。』



貴船の神にここで待てといわれてから三十分くらいだろうか。
足がつかれてきて高淤の神がいつも降りてくる岩に腰を下ろすとはぁとためいきをつく。

「まさか、自分の誕生日祝いにいまさら陰陽術を教わる師がくるとは思っても見なかったな。」
「お前のためだろう。たびたび神気を開放してその肉体が持たなくなる。」

と青龍がいうとの隣に腰をおろす。神将たちは先ほどから
ここにやってくる近所の子供たちに姿をみられぬように隠形していた。

三十分もまてば、さすがの神将たちでも不思議におもう。
高淤の神はいったいなにをしているのか。と。


すると高淤の神がすっと近くに現れる。
『待たせたな。隠形している神将たちよ、顕現しといた方がいいぞ。なんせ千年もの会ってなかったのだからな。』

神将たちは顕現すると天一が聞く。
「高淤神。千年と申しますと?」

というと本宮のほうから一人の老人と一人の青年が、狩衣をきてやってきた。

そして突如神将たちがそちらを向いた。

『晴明・・・・・昌浩・・・・・』
紅蓮がその人たちの名を呼んだ

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