9.過去と決意をめぐらせて



-なんでよ。-

-なんで、救ってくれなかったのよ!-


過去の声が頭に響く。
あぁこれは夢だ。過去のことを夢として見せているのだろう。

-どうして!あの場所には貴方以外にも-


-イヤァアアアアアアアアアアア-


かつて、幼き半人前陰陽師がいました。その少女は。友と呼べる女がいました。
だれも霊感のある少女に近づこうとしないのに、その少女はきにもせず仲良くしてくれたのです。

しかしその二人を引き裂く出来事がおこりました。

友は、妖に殺されてしまったのです。
目の前で、何もできなかった少女は自分を悔やみました。

そして、その近くにいた神将たちもまた、何もできなかった自分たちを、
主候補を絶望させてしまったことに悔やみました。




様!!」

天后の声が紅家で与えられた一室に響く。
体中汗ばみ、苦しそうにする主の姿の異変に気づき、異界からやってきたのだった。

「ごめ・・・さい・・・・・」

主の寝言を聞いた天后は、はっとする。
いったい何が、主を苦しめているのだろうか。

様・・・様!」
体をゆすると、ようやく主が目を開いてくれた。
ほっとするもつかの間、主の瞳から一適の水が流れた。




水将だから気づいた。
でなければ、すぐにぬぐわれた涙に気づくはずもなかった。

「・・・・・おはよう天后。」
「・・・おはようございます。あの・・様・・。」
「天后。ほかのみんなには言わないで。」

それは、主から下された命令ではなく、お願いだった。
心配かけたくない。という。その思い。
天后は、わかりました、といってそのまま異界へと戻っていった。

主を元気にしてくれるのは、青龍がいれば・・・
そう青龍ができなければ、ほかの神将が何をいっても無駄なのだから。



神将たちが異界にそろっていたとき、は苦笑した。

「どうして・・・貴方はここにいるの?若葉?・・・・だとしたら私はいったいどうすればいいの?」

の呟いた言葉は部屋に誰の耳にも届かずに響いた。


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紅家の台所で、秀麗と天一は朝餉を作っていた。

「それで、ここで小麦を練り上げて。」
「まぁ、それで生地ができるんですね。参考になります。」

ととても穏やかに時を過ごし、朱雀はその様子をじっと見守っていた。
天貴が幸せそうに笑っているのなら。と。



静蘭も、最初こそは、その者たちを怪しんでいたが、素直でどことなく切なげなに惹かれていた。

「お嬢様。そろそろ家公さまを起こしてまいります。」
「あぁ、うんよろしく静蘭。」
「朱雀。様を起こすように青龍に。」

天一が異界にいる同胞を呼ぶように朱雀にお願いする。朱雀は頷くと瞬く間に隠形して異界へといった。
ちょうどそのとき、天后に呼ばれ、青龍がやってきていた。朱雀は神足でかける青龍をみて、なにかあったのか、と思い
そのまま青龍の後を追った。



部屋でまだ茵の中で上半身だけ起こしぼーとしてるをみて、青龍はすこし安心した。
その姿はいつもと変わらないと思っていた。

。」
名前を呼んでから気づいた。その表情がひどく落ち込んでいることに。
何年もずっとそばに控えていたのだ。

わからないはずがない。



青龍はそっとに近寄ると。優しく抱き寄せた。




「何があった、」
と青龍が問いかける。それに黙るはうつむいてしまう。

「またお前は俺たちに心配かけないようにしようとしてるんだろう。」

昔からそういう癖のようなものがこの主にはあったから。

「心配なんていつもしている、いまさら何を気遣う。」
「・・・宵藍・・・。」

は、青龍の胸に顔をうずめた。
青龍はそっと頭をなでてやり、その様子をみていた朱雀は天一にもう少し朝餉に遅れそうだということを伝えにいった。



「若葉のね、夢をみたの。」
「・・・」

「私ね、助けてあげられなかった。若葉にうらまれても仕方がないの。」
「俺たちにも非はあった全部一人で背負うな。」

青龍の肩布をつかむとは青龍を見つめた。

「でも、もし若葉が敵の手におちて生き延びているなら助けてあげたい。私の敵になるなら・・・私は・・・」
「今回は俺たちも前とは違う。お前が望むなら、若葉を助ける、敵となってお前が斬るのを望むなら血塗れになっても俺がお前の望みをかなえてやる。」

血塗れとなっても、が救われるなら、なんだってしてやる。
その決意は、もう青龍だけではなく、ほかの神将たちが誓ったことだ



「嫌・・・そんなことさせない。血塗れの咎なんて誰にももう背負わせたくない。」

自分のせいで誰かが傷ついたりするのは絶対に嫌だ。
は、首を横にふった。

「いっただろう、お前が望むなら、と」
青龍は、苦笑して、の唇を自分のそれと重ねた。

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朝餉のしたくがそろったのだろう。
の気持ちも落ち着いた。青龍はを朝餉にいけと促した。

は頷いて、着替えて足を進めた。




朝餉には、秀麗と天一のつくった饅頭などたくさんの食材が並んでいた。

「ごめんなさいね。秀麗さん。私朝が弱くて手伝えなくて」
「いえいえ、いいんですよ、さんは夜に見回りにいってるし、それに天一さんが手伝ってくれるから。」

「そっか・・・。でも手伝えるときは手伝うから。」

ただでここにおいてもらうわけには行かない。と##NAME1#が思っている中

秀麗は霄太師から、を住ませるための資金はたんまりともらっているから
むしろ助かっているなど、口にだせなかった。

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