8.手がかりは彩七家
紅家に行くのに、地図をもらったのだけど。
「・・・・・」
「・・・・」
「・・・・・・」
神将たちが後ろで痛い視線を向けています。
はいすみません。迷いました・・;
≪、地図を貸せ。≫
呆れて隠形したままの六合がいう。
私は、その言葉に素直にしたがった。
これでは付くのは、いったいいつになるやら。
「それにしても、神姫が方向音痴でいいのかしらね?」
顕現している太陰がグサリと鋭い一言をいう。
「太陰。神の子だからって神だからって何でも得意と思ったら大間違いよ。」
苦笑しながら応えると、太陰は風読みが苦手だからか、すぐに納得した。
「しかし、お前のこれは不得意とかそういう次元の問題じゃないだろうに。」
紅蓮がいうと、周りの神将はうなずく。
「昔は。高いところが苦手だと言うのに、木におのぼりになって泣かれていたこともありましたね。」
「えぇ、屋敷から出るな、と青龍にいわれてよく木上からそとの妖を払われていました。」
異界でも、よもやこんな会話をされているとは知る由もないが、そのときにクシャミが出たので大方予想はついていた。
「太裳と天后あたりがうわさでもしているのだろう。」
と勾陣がいう。
というよりも、が昔してきた失態はすべて神将たちはしっているのだ。
≪・・・右に曲がればすぐだ。≫
神将たちが話をしている中、六合だけはまじめに地図を解読していた。
六合のいうとおりに、右に曲がれば大きな古びた屋敷があった。
「うわぁ・・・・・。」
「紅家って貴族なんだよな?勾よ。」
「の・・はずだが。」
神将たちとはただただ、あいた口がふさがらなかった。
なんというか、その屋敷は、安倍の家よりもひどかった。
まぁ、安倍の家も何度も修繕しているが、これほどまでに継ぎはぎだらけの家をみたのは久しぶりだ。
ともかく、人を呼ばなければ、と思っていた矢先、霄太師のところであった
主上つきがまっていた。
「ようこそお越しくださいました。お嬢様と旦那様がお待ちです。」
と、中へと連れて行かれた。
中に入ると、テーブルの上にたくさんの饅頭と、お茶がおいてあった。
秀麗はにこりと微笑むと
「いらっしゃい。」
といい。席を勧めた。
神将たちは、隠形したまま様子を伺っている。
すると、秀麗は、父親を紹介するわ、といい。目の前にいるのが紅邵可という紅家の長兄らしい。
ということはは、本来ならば、この人が紅家の長になっていたということか。
「はじめまして。紅邵可といいます。朝廷では、府庫の管理をしています。」
穏やかに微笑んでいる。とても人のよさそうな人だ。
「はじめまして、安倍です。妖異討伐のため霄太師に軍属に任命されました。といっても、軍には名ばかりで、じっさいには活動しませんが。」
そう、霄が出した条件は、軍に名を残すこと。
軍は比較的、町の異変に気づくのが早いらしい。まぁ御史台もそれにしかり。
「それで、霄太師が貴方に会えといったのなら、貴方が何か情報をお持ちなのでは?」
「いや、私ではなく、紅家に常にいる私の弟の玖琅が一番詳しいんだけれどね。玖琅の影がどうやら何か人でないものに襲われたらしい。それが貴陽のここ彩七家の屋敷がある近くらしくてね。」
影とは。使用人のことらしい。
神とさほど変わりのない紫霄、その人がここにということは・・・。
「霄太師がね、君をここにおくようにと。」
やはり。ひとまず、お茶を飲んで、落ち着こう。物事については落ち着かなくては、でなければこんな職についてないのだから。
学生とはいえ、一応陰陽師なのだから。
「あ・・・このお茶美味しい。」
「それはね、甘露茶なの。私も小さいころ気に入っていて、よく駄々をこねてそれを飲んでいたわ。」
甘露茶か。あっちに帰ったら買ってみようか。といつも煎茶と玉露ばかり飲んでいたから、たまには違うお茶もいいだろうと思った。
≪。どうするんだ?≫
「・・・・妖異を倒すまで、お世話になります。」
その言葉を合図に、神将たちは警戒の念をといた。
主が決めたことだから、何もいうことはない。それには神姫だ。
愛を与える存在の周りに、害をなすものは寄ってはこない。
「宵藍。」
いまだ、警戒の念をといてなかった神将を名を呼ぶ。
すぐに顕現をする神将を邵可は驚きもせずにみていた。
「どうやら、邵可さんにも見鬼の才があるようですね。」
「見鬼・・・あぁ、みる力ということですか。私は府庫で本ばかりを読んでいたので、異国のことも結構しっております。」
と微笑む。
「こんな穏やかな父親がほしかったなぁ。」
「お前の父親は阿保だしな。」
といい。ほかの神将たちが笑っていた。
一週間も。紅家にいたら、神将たちもこの国のひとたちに警戒をすることもなくなり、
朝廷にも遊びにいったりとしていた。
妖異のものは、軍の人と白虎らが担当している。なにかあればすぐに知らせるとのことだった。
一週間もいたら、さすがにこの国とか、そんな考えもなくなっていた。
今では、みんな仲良く会話していたりする。
あの警戒していたのがつい一週間まえだというのが、不思議なほどに。
ただ、藍楸瑛という男の前だと宵藍が妙に威嚇しているけれど。
「やぁ。殿。それに青龍殿。」
「藍将軍。こんにちは。李侍郎も。」
「あぁ。」
どうやら、李侍郎は、私よりも方向音痴らしく。常に藍将軍が探し回ったりしているのだとか。
「殿。そういえば先ほど情報が入ったのだけれどね。変な鳥。犬。そしてそれをつれている少女を彩七家の屋敷付近で見たそうだよ。」
「少女ですか?」
鳥や犬をつれた少女、はたしてそれはいったいなにを示すのか。