6.強いのだーれだ?



どうやら、相手は決まったようだ。

あの藍楸瑛だ。
将軍と呼ばれているのだから、強いのだろう。たぶん。

「藍将軍はこの国で行われた先日の大会で優勝をした者でな。」
と霄太師がつぶやく。ひげを触りながら。

≪・・・たとえ、やつが強くても、はそうそうやられはしないだろう。≫

六合が隠形しながら応える。
六合は、ふと、遠くに控えている青龍をみた。

ずっと、の対戦相手を睨んでいる。


青龍は、俺たちですら、なかなかに近づけさせないときがあった。
当時はそれはもう、神将たちの溺愛ぶりはすごかったので、青龍はけっきょく天一らにをとられ、舌打ちをしていたものだ。

それほどまでにを愛していたのだ。いや。それは今も同じことだろう。

「どうしたの六合?」
≪青龍が不機嫌だ。≫

「そんなのいつものことじゃない。」

っと簡単に笑っていうところがこの少女の怖いところだ。
あの青龍の微妙な顔色をきちんと見分けることのできる少女だ。

でも、それでも、もいとおしそうに、青龍をみている。




一時、自分は、この少女がすきなのではないのか、と思うときがあった。
彼女のとなりは、暖かくて、安心できるそれだから。

けれど、自分は、たしかに彼女を愛していても、その愛は、女を愛すそれとは違う。
たとえるならば、かつて成親や、昌親が昌浩を愛していたそれと酷似している。

騰蛇もそれと同じだろう。この少女は、たまにわれわれを驚かせるくらい。言動が昌浩ににているところがある。
血を引いているのだから、そうだろう。ということもあるが。

「それじゃ、いきますか。」

と、つよくは剣を握った。



剣を持たせて、自分と戦ったら、三本のうち、一本はとられるんじゃないか。という技術はこの少女はもっていた。
しかし、それを普段使用するか、といえば機会はないのだ。

なんせ、平安の時代とちがい。平成の時代は、銃や刀をもってはいけない。という法律があるのだ。
めったに使わないし、少女には、それを超える陰陽術と神の力をもっていた。

神の力は、我ら十二神将よりも格がうえ。
そもそも十二神将は、神といっても末席でしかないのだ。

六合は、己の主の姿をしっかりと見つめていた。




試合がはじまると、相手は、余裕そうに構えていた。
なんせ、相手は女だったから。

「女だから、といって甘く見られてはたまりません。」
「甘くはみてないけれどね。まぁ。私もそう簡単に負けられないものでね。」

というと、後宮の女官たちだろう、塊のところにパチンとウィンクをしていた。

女好きか。
女好きの類の男は、あまり好きではないので、先に攻撃をは仕掛けた。

宙に舞い、楸瑛の頭上に剣を向ける。
キィィンという剣と剣のぶつかりあいが始まった。


楸瑛は驚いていた。
これが少女が操っている剣の重さなのかと。
踏み込みは甘くもなく、そのすばやさはまさに戦闘向けそのものだった。


「しかし、隙がある!」

と脇をすっと、通って、背をとろうとした瞬間。ふっと少女は微笑んだ。

「隙?隙なんて見せるわけないじゃない。」

私は神姫なのよ?と心のなかで笑った。
神の速さに到底叶うものなどいない。

すっと、後ろに剣をもつと、体をひねり、首筋に剣を向けた。


会場のどこもが圧倒された。
あの藍楸瑛が、主上付きの、実績あるものが少女に負けた。と。

「ほっほほ。そこまで。どうじゃったかの?宋よ。」
すると、今までどこかにいたのだろうか、宋太傅が、笑いながら、楸瑛にいった。

「ほぉ。いい女だな。しかし、ふだん女遊びをしているものが女に負けるとはどういうことだ。」

と。楸瑛は青くなるいっぽうだった。
神将たちは、控えていた場からそのまま、のところへ向かった。




≪ばか者。神足をつかったな。≫

神の力をつかえば、疲労がそれ以上にたまるのだ。

「さすがに、本気出さないと負けそうだったの。」
すると、神将たちは驚いた。主が本気をださないと勝てないくらい、あの男は強い。
ということだ。

≪まぁ、そういうな青龍よ。素直にの勝利を喜んだらどうだ。≫
勾陣が笑う。

太陰たちも、にこりと微笑んだ。
自分の主がここまで強いとなると、自分たちもうれしくなった。
自分たちの主が、ここまで、成長してくると、切なくなった。




「ん・・・ごめ・・・眠・・」

一気に体力を消耗したを青龍はしっかりと抱きしめた。
これは、異界で寝かしつけたほうがよさそうだ。

と思い、あとの神将をのこし、異界へと運んだ。

異界への道筋で

やさしく、の頭をなでた。

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