12.気づかないふりをしていただけ



夜、茶家の屋敷に乗りこもうと、していたが会えなく李絳攸と藍楸瑛。
そして静蘭につかまったのは、彩七家の茶家の裏側だった。

「もご!?」

口をふさがれて暴れる
青龍が、すかさず助け出す。

!・・・貴様なんのつもりだ。」
「おちついてください。軍の調べでここにはわれわれにとって不都合な人がいたんです。」
藍将軍がいうと、そっと口に当てられていた手を離された。

「そこには、貴陽で最近わるさしている盗賊がいるんです。」
「そこに、異形っというものがいるのも確からしい。どうやら盗賊の頭がその異形らしいからな。」

というと、静蘭が、にっこりと微笑む。
「霄太師が、あなた方は人間に手出しできない。と申されましたので、助太刀しにきました。」



いったい、どこまで話をしているのだろうか霄太師は。
はぁとため息をつくと、現在の状態を確認する、わかりやすく図にしたという李侍郎の分配図をみるかぎり入り口付近に盗賊が3人。
裏門に2人。中に5,6人いるだろうという予想だった。

そして、離れにいるのが、若葉と異形のものということらしい。

「よくこんなことわかりましたね。」
「軍人には盗賊とちょっとした技があるんだよ。」

にこりと微笑む藍将軍を軽くかわし、図をみる。後ろからと前から両方から同時に突入した方がやりやすいだろう。
ということになり、前から藍将軍、後ろから静蘭が突入することになった。

は、藍将軍がそいつらとやりあっている間に離れに向かうことだった。




「その作戦でいいわね。勾陣、六合。一応後ろから頼んだわ。」
「あぁ、任せておけ。」
「・・・・お前を騰蛇と青龍に任せるのはいいが・・・太陰と玄武はどうする。」
「じゃ、太陰と白虎でそっちにつけるわ。玄武と天后でこっちを固める。なにかあれば異界で待機してる天一たちを呼べばいいし。」

と神将たちも配置がきまり、いざ、突入を開始する。
太陰が、裏門へつくと、空にかるく風流を放つ。それを確認したたちは前から突入する。



「!?貴様ら!なにをしにきた!」
「それはこちらの台詞だよ。盗賊風情が彩七家の屋敷に侵入するとはどういうことなのかな?」
というと、藍将軍が剣をすばやく抜き、一人、斬った。

殿!ここは任せて離れへ!」
「わかりました。」

といい走り出す。



後ろから、追ってくる盗賊を相手をしている暇もないので人に術をかけるのは嫌だが仕方ない。

「---縛!」

ぎゅっといっきに盗賊たちの動きを封じる。
離れのほうにいくには、池の橋を通らないといけないらしい。

しかしその向こう側には盗賊が3人控えていた。
「ゲヘヘ。お嬢ちゃん、かわいい顔をしているね」
「本当にね。その服禁色ってことは藍家のものだろう。金目のものおいておきな。」

「悪いけど。相手をしている時間はないわ。玄武。天后。」
「承知した。」
「玄武右側をお願いします。」

というと水将のふたりは池の水をつかい、水柱を作る。



「うわあああああああ。なにだこれは!ギャッ!」

叫んでいると、水柱は離れまで綺麗に弧を描いてさらに大きな橋となった。
すると、後ろから侵入した静蘭が盗賊たちを斬った。

「ここはお任せください。どうやら仲間を呼んだようで近隣の盗賊がここに向かっているようです。盗賊たちの相手はわれわれにすべて任せて先へ。」
「わかりました。ありがとうございます。----その水は動きを固め月に支配されし氷となる。」

女神に属する月の冷気が集い、水将の力でつくられた水柱をが氷にと属性をかえる。



「あまり無茶はするな。。これから戦うというのに」
「あ、りがと・・・紅蓮。でもせっかく作った橋を紅蓮の気で溶かさないように気をつけてね。」

というと神将たちをつれ、その橋を上っていった。
橋の中盤にさしかかると、そこに姿を現したのは、鳥と犬をつれた少女。

「若葉・・・・。」
「ようこそ。。よくきたわね。紹介するわ。霍と茲よ私の部下なの。」
「クククヨクキタナ娘。我の同胞を消し去ったようだな。」

不気味な笑みを浮かべ、に笑いかける若葉。
そして鳥の霍は昼に倒した同胞と同じ顔をしていた。

「なぜ。貴方が異形とつるんでいるの。」
「なぜ?それを貴方がいうの?私を助けられなかった陰陽師さん。」

というと若葉の後ろから翼が生えた。
やはり。食われてしまったのだ。異形に。





「食われてしまったけれど、意識のほうは私の方が強かったみたい。私の自由になるもの。私の望みは徒一つ。貴方の死よ。」
というと神将たちは、の前に立つ。

「あら、陰陽師さんの式神だったかしら?あちらにいたときは見る力がなかったけど。私を食ってくれた陽剛のおかげで見る力ができたわ。」

「貴様がそれをいうのか!誰よりもと友としていたお前が!」

紅蓮が叫ぶ、天后は泣きそうな顔をしている。天后はとともによく若葉といたから。
そばに控えていたから。玄武は結界を回りにつくって様子をみていた。

「とも?友って簡単にいうけれどね。私は私は目の前で苦しんでいたのには助けてくれなかったわ!」
というと妖気が爆発し。風の刃が神将たちとを襲う。




「助けたかった!助けたかった!でもあの時は力がなかった!小学生の陰陽師なんて力が弱かった!」
「ウソ。大陰陽師だった安倍晴明の後継の癖に!」

晴明の後継。昌浩の後継。その言葉がいくらを傷つけただろう。

「貴方を助ける。絶対に!」
「無理無理。もう遅いわ。霍!茲!」

霍は雷を落とし、茲は爪で攻撃を仕掛けてきた。

!我の結界はもう持たぬ!」
「いいわ、玄武。宵藍。紅蓮。霍と茲を調伏するわ。」

「あぁ。わかっている。」
「・・・・俺はいったぞ、お前が望むならたとえ血塗れの咎を背負っても。あいつを斬ると。」
「宵藍。・・・わたしは、若葉を信じているから。」

とにこりと微笑むと騰蛇と青龍はそれぞれの異形にむかって飛んでいった。



様は・・・私が守ります。それがたとえ若葉であったとしても。」
「天后。」

泣きそうな顔で必死に訴える天后。その向こうでは怪しく微笑んでいる若葉の姿があった。

現代において、霊感のあるというだけでなにかと気持ち悪がれたりしている。
それが子供であり、なにかいると指差した主を気味悪がる人間がいた。

なのに若葉だけはすごいね。とだけいって一緒に笑いあったのだ。
それなのに。主の行く末を、死を望むのか。と。

「我は、若葉が本当に意識をたもっているのかが気になる。のっとられているのだ。姿だけ化けている場合もあるのではないか?」

玄武が口に出す。
それではっとする。そうだ。若葉は死んだのだ。ならばその異形がその姿を借り、を殺そうとしているのでは?と。


「そういうこと・・・若葉!もしあなたが本当に私の友達なら私を殺そうとしたりしない!貴方は若葉の記憶をみたただの異形の妖異だ!」




その姿を悪用させたりなんてしない。

「オンアビラウンキャンシャラクタン!」
「ぬるい!」

「ナウマクサンマンダ、バサラダンカン!」
「クッ!小娘が!」

若葉は私を小娘なんて呼ばない!やはりやつは若葉を食らっただけの化け物だ!

「オン、デイバヤキシャ、バンダバンダ、カカカ、ソワカ 」
異形の妖異を縛る。
「!・・・やめて・・・私は若葉なのよ!」

「黙れ!」
と、茲を調伏していた青龍が大鎌を茲にふり真っ二つに切り裂き、若葉の姿をした陽剛に切りかかる。
翼が片方落とされ、痛そうに叫ぶ

「ギャアアアアアアアアアアア!」




「こちらも忘れてもらっては困るな!」
と裏門から侵入してきた勾陣が筆架叉をだし切りかかる。

紅蓮もようやく霍を倒したようで、これで、闘将がの元に集う。
「私たちもわすれないでよね!えーい!」

と太陰の風が縛られた陽剛を空へと飛ばす。
そこにすかさず刀印をきる。

「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」

神気を爆発させたに神将たちは驚いたが、今回は一番が辛かったのだ。
友の姿をした妖異が悪さをしていたのだから。

妖異はふわっと浮くようにして消えていった





神気を爆発させたは、髪は紫紺にかわり、瞳は美しい青色。
まとう藍家の禁色によく似合っていた。


神気をとうぜん爆発させたは倒れこむ。
すかさず六合がキャッチする。

「・・・無理をしたな。青龍が怒っているぞ。」
「ごめんね。でも・・・若葉・・・最後笑って逝ったよ。」

その姿はとても切なく、うれしかった。8歳でとまった少女が同じ18の姿をして冥府にいけたのだ。

どうしようもなくうれしかったのだ。生きている。と思っていた。
けど、それは玄武が見破った。ちがう。気づいていたのだ。

だって目の前で死んでしまったのだから。どこか生きていてほしいと思っていた。

の瞳からスッと涙が落ちた。

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