10.初デートは戦闘
昼になると、はどうせだから、とこの国のお茶を買っておこうと思っていた。
安倍には、依頼人がよくくるからお茶をお出しするし、すぐに切れてしまうため、いろんな種類のお茶があってもいいだろう。と思っていた。
「たまには、青龍と二人きりにしておいてやるか。」
と勾陣が言い出し、紅蓮と六合はそうだなと頷いた。
実は、夏休み中で、異世界に飛ばされていたから、忘れそうになっていたが、本日はの誕生日だったのだ。
例年、夜は神将たちで祝っていたけれど、今年は青龍と恋仲になったわけだ。
昼だけ、青龍に譲ってやるか、と神将たちは考えていた。
「あれ?珍しいね、みんなお留守番なの?」
出かけようとしたとき、がいつもついてくるはずの神将をみて不思議そうにしていた。
誕生日であることは、本日の夜に紅家で宴をやることになったため、には内緒なのである。
もちろん、青龍も誕生日の類を口にしようものなら勾陣に殴られるだろう。
神将たちは、を驚かせるのがとても楽しくてしかたがないのだ。
それも、例年が仕事に没頭していて本人が忘れているからできることなのだ。
「あぁ、私たちも、それぞれこの国をみてみようと思った。それに、私には、朱雀と手合わせの約束があるからな。」
朱雀は一瞬顔を歪めたが、すぐにそうなんだ、といっていた。
はそっか。といい納得して、青龍をつれて町へと出て行った
「勾陣、俺は手合わせの約束なんてしてなかったんだがな。」
「たんなる口実だろう。どうせお前は天一と一緒にいるんだろう。私は六合か騰蛇と手合わせをしているよ。」
といい、突然話を振られた二人をずるずると引きずって、庭の方へと向かった。
「おい、こら離せ勾!」
「・・・・・・・」
朱雀はその様子をみて、自分でなくてよかった。とほっと息をついていた
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町に出たは実に久しぶりの休暇のようなものなので楽しんでいた。
よくよく考えれば、初デートというわけなのだが、本人はまったく気づいてない。
青龍は、万が一のときのために人型をとっていた。
この容姿で夏祭りに昔一人で、いや神将たちはついていったのだが、
はたくさんの男に声をかけられていた。
害虫駆除は大変なのだ。
青龍はため息をつくと自分の格好をみる。
青い服をまとっている自分は、周りから見れば、禁色をまとった男にしか見えないだろう。
しかし、藍家には、顔のしらない兄弟がたくさんいるらしく、別にかまわないとの事だった。
「おや、殿じゃないか。こんなところで会うなんて赤い糸でもつながっているのかな?」
と胡散臭い笑みを浮かべた男が近寄ってきた。
「藍将軍。こんにちは。」
「・・・・君は・・・青龍殿かい?」
人型になったことで、姿は耳は人間の丸みをおび、髪は黒く染まる。
青龍は、眉間にしわをよせての腕をつかんだ。
「これに近寄るな。」
「ちょ、ちょっと宵藍?」
いきなり腕をひっぱられ、バランスを崩し、青龍の胸に顔を直撃した。
「おやおや、君は、ずいぶんとまた情熱的なんだね。」
「黙れ。」
火の粉が散る中、は、あっ!と狙いの茶屋を見つける。
ちゃんと甘露茶もある。
「宵藍、あそこいこう!」
その笑みは、朝のことなどすっかりと忘れ去ったほどすっきりとしていた。
「お茶がすきなのかい?ならば藍家の茶も飲んでみるかい?」
と、突然提案してきた楸瑛に対し、は、考える。
「でも、今回ほしいのは甘露茶だけなので大丈夫です。それにほかの茶は霄太師が褒美にくれるので。」
貴船の神に頼まれた酒以外にも、に茶をくれるらしい。
「そうかい、残念だな。・・・・なにやらあちらが騒がしいね。」
話をしていると、八百屋近辺に騒動があったのか、待ち人が騒いでいる。
「キャーーーーーーーーーー」
と女の悲鳴が聞こえると、鳥の姿をした妖異が人を襲っていた。
「宵藍!」
「あぁ。」
瞬きひとつで本性に戻ると、青龍が大鎌を召還した。
は、懐から、呪符を出すと、その鳥に向かって走り出した。
楸瑛はまた、ため息をついて、そのあとをおった。
彩七家の近くの町で、こんな騒動だ、周りのひとは面白がって見に来ていたり、逃げたりと、
邪魔だ。
「人が多い。・・・・ちっ」
青龍は舌打ちをすると、空に跳躍し、屋根の上を走る。
はしたの方から攻めていた。
ようやく標的の前にたどり着くと、楸瑛は周りの人たちに警告する。
「聞け!ここの者たちは、今すぐここから離れろ!」
回りの者たちは、軍がきた、と急いで四方に散る。
「では、藍将軍も下がっててください。」
-娘・・・主が呼んでいる。-
「貴方の主とは誰よ。」
-クク・・・それはお前が一番しっているだろう。-
妖異と対峙しているとき、上から宵藍が鳥を切った。
羽をもぎ取られた鳥は地面に急降下する。
「宵藍。まだ聞きたいことを聞いてない。」
「まだ、息はある。」
と大鎌を妖異の上に持っていく。
「しっていること全て吐き出せさもないと」
-吾が主はお前の友を奪った妖異、そしてその妖異に従ったお前の友もまた吾が主-
それだけしゃべると、自爆するかのように炎を発して消滅した。
は、どういうことだ、と考え込む。
青龍は、大鎌を離すと、瞬きひとつで大鎌が消え、姿も人型にとなった。
「殿。大丈夫かい?・・・・私は朝廷に今回のことを報告してくる。」
「はい・・・お願いします。」
楸瑛は、そのまま走っていった。
何が、何がどうなっているの?
青龍は、混乱しているに帰るぞとだけいい
の手を引いた。
「宵藍・・・あのときの妖異が若葉を食らっているということかな・・・」
「・・・・俺にはわからないが、そういうことを口に出すと悪いほうにしか起こらない」
言霊には力があるから。
と青龍は、まっすぐと紅家に帰宅した。