9.つながった想い




朝起きると、ぼーとする。
5時くらいだろうか・・・。神将たちが起こしてこないところをみるとだいぶ時間があるのだろう。
今日から夏休み。宿題も大量にあるけれど、時間が十分にできた。

恵梨ちゃんがうちにいるようになって2週間ほどたった。
さすがにそろそろ、家へ帰してあげたい。
ご両親も心配しているだろうし。

「それにしても・・・。どうしよう」

自分の気持ちに気づいてしまってから、もっと宵藍が見れなくなった。
照れくさい。っていうのが一番だ。


せっかくの夏休みなのに、樹季羅と麗紕のこともある。
陰陽師の父親は役にたたないし。



貴船にいってこようかな。
気晴らしになるし。

かといって、この時間にいくのはあれかな・・・。

神将たちになぜ護衛をつけなかったかとか。言われるんだろうね。
まぁ、たまには一人でいくのもいいかも。

思いついたら、立ち上がる。
ばれないうちに行動を開始しないと。

急いで着替え、そっと家をでる。
すぐばれるな。と思いながら。門を出ると・・・。





「どこへ出かけるんだ。」
紅蓮がどうどうと仁王立ちしてたってたよ。

「えっと、貴船にいこうかなーなんて・・・あはは。」

乾いた笑いをすると、紅蓮はしょうがないなといい。私を抱き上げる。

「ぐ、紅蓮!?」
「つかまってろ。どうせ白虎や太陰を使うきがないんだろう。だったら目付け役が来ないうちに神足でいく。」

といい、すでに走る紅蓮。
目付け役とは天后、青龍、太裳のことである。





貴船とは目と鼻の先とあってか、すぐについた。
そのまま森の中に入っていくと、深く深呼吸する。

「すーはー。やっぱり神が近くにいると清浄な感じで落ち着く。」
「一応神将も神だがな」

それはそれ、これはこれで。話をスルーする。

「はぁ。まったく。考えたいんだろう。しばらく一人にしてやる。」
「ありがとう。」

紅蓮は、私を気遣う。
あの後、勾陣がおもしろがって、天一と天后にばらした。
すると天一が朱雀にばらして、朱雀が太陰と青龍以外の神将にばらしてしまった。

太陰にばれたら一環の終わりだ。
青龍にすぐにばれる。




そもそも、私に恋愛なんて向かない。
女神の娘って言われても

私は私だ。

安倍だ。

「はぁ。どうしたらいいんだろう」
『どうもこうも、はっきりと相手に告げればいいだろう』

いきなり返答をもらうとは思っていなく前のほうをみると高淤の神がいた。

「た、た。たたたった高淤の神!!!」
『無駄にたが多いな。』

面白そうにして私の顔を覗き込む高淤の神。





『何をそんなに意識している。神と人の合いの子よ』
「うっ・・・だって、こんなの初めてで」

どう接すればいいかわからない。
いつもどおりにしようとしても、なぜかいかない。

『それで、あの青龍が悲しげな表情をしているのはわからないか。』

悲しげ・・・?
宵藍が?

『主に避けられているとなってはつらいだろう。』
「うぅ・・」




宵藍を傷つけていた。
大事な人なのに。

悲しい顔をさせたくないのに。

『お前の本当の気持ちを伝えてやれ。さすればうまくいくであろう。でなければ陰陽師としての自覚が薄れ、人を操る異邦のものなど倒せまい。』

異邦の妖異が倒せない。
見つけられない。

それは私がぼけっとしているからだ。

これでは、神将たちもあきれて離れていってしまうのではないだろうか。





「ありがとうございます。高淤の神。決心がつきました。」
『そうか、ならば、話し合うがよい。そこにいる神将たちとな。』

ふと高淤がさしたほうをみると、そこには宵藍と、天后。紅蓮と六合が。
決心って。いましたばっかりだよ!

急すぎるよ〜(泣


『それまではほかの神将と私が相手をしておくか。』
「うっ・・・」


二人きりにさせられたほうがもっときついかも・・





『では、十二神将騰蛇、天后、六合よ、場を変えて話そう。』
「あぁ。」
「わかりました。青龍。様を頼みましたよ。」

「わかっている。」

そういうとほかの神将は高淤の神と本宮の方へいってしまった。

き、気まずい・・・。

すると青龍のほうから話しかけてきた。
「俺は・・・お前になにかしたか?」

「え?」

「何かしたのだろう?お前の嫌がることを。」
「ち!ちがう!私は、その、えっと、ただ・・・」




好き。それだけたった二文字なのに、震えていえない。
大きな妖を目の前にしてもきちんと真言を唱えられるのに。

こんなに緊張して、震えている。

「俺がなにもしてないというのなら、なぜ俺をみない。」
「・・・・」

「俺は、大事にしてきたものが急に離れていく恐怖をしっている。」

死というもの。晴明や昌浩が人であったから、簡単に逝ってしまった。
瞬きひとつという神の時間で。

大事だった、大事な主だった。





「宵藍・・・ごめんなさい・・。」
つらそうな声をだす宵藍をみた。
久しぶりに顔をみた気がする。

胸がとても痛くなった。
大好きなひとをこんな顔をさせているのはこの自分なのだ。

「俺は、もう二度と大事なものが離れていく様など見たくない。」

宵藍は私に近づいてきた。そしてやさしく抱きしめた。





ふと、昔を思い出した。
昔はよく、こうやって、宵藍にだきついたりしていたっけ。

母親がいなくて、父親も仕事でおそくて、ぬくもりがほしくて。

「宵藍・・・。」
「お前が好きだ。」

何を言われたのかわからなかった。
頭が真っ白になったかのように。

え。
今なんていったの?好き?

「えぇえええええええ?!!」


宵藍が私を?
予想もしてなかった展開にびっくりした。
どんどん顔が熱くなる。

「私・・・も・・・その          好き。」

ものすごく小さな声で告げた。その言葉は
宵藍にはきちんと届いたようで。

「そうか。」

とだけ。いっていた。


気づいたら、こんなに密着していて、心臓の音が聞こえないわけがなかった。
だから宵藍は気づいたのだろう。
速さに。

私は、とんでもなく、照れくさかった。

「お前は、主だ。でもそれ以上にお前を愛している。」
「宵ら・・んんっ!?」

すばやく、唇を掠め取られた。
ただ、私は、固まっていた。

余裕がありすぎる宵藍がちょっとかっこよく見えた。

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