6.愛の違い
どうやら、ほんの少しだが、体の中に瘴気が入り込んでしまったようで、
おもったように体が動かなく、人型をとった宵藍におぶってもらった。
紅蓮がはじめにおぶされ、といったのだが、宵藍がその前に私を抱き上げた。
お姫様だっこという・・。
さすがにちょっとそれは困るので、おぶってもらったのだが・・。
きっと白虎だったら、担がれてるな・・とか思いながら。
「大丈夫?」
「うん・・・。あ、恵梨ちゃんさえよかったら今日泊まっていって。一応瘴気払うから。」
見鬼と霊力がごくわずかにある恵梨ちゃん。
いま本体につっこむと厄介だから。
だって、本体は、恵梨ちゃんが狙いだから。
壱君は早くに気づいたから、しばらく離れるようにしたかったのだろう。
そして体もそれに支配された。
「うん。わかった。じゃ今日はお世話になるね。」
「といっても、もてなすのはきっと天一か六合あたりだけど。」
さすがにこれじゃ料理もさせてもらえないだろう。
だれにって。神将みんなに止められる。
とくに宵藍と太裳。
「その体で作ろうなど考えようものなら布団ごと縄で縛り付けるぞ。」
≪青龍、人型でそういうことをしゃべるな。≫
誤解されるぞ。と紅蓮が突っ込む。
「それにしても、ここら辺一帯がいつもと違う感じがする。」
≪うん。風もなんかいつもより重みがある感じ。≫
≪あぁ、なにか不穏な感じがする。≫
風将の二人が語る。
風が…ならば…
「玄武。水からは何か感じるか、あとで太陰と一緒にこの辺みてきてくれる?」
≪承知した。≫
ここらへんは私が普段守っている場所だ。
悪さはさせないよ。
家につくと、ひとまず、恵梨ちゃんには客室にいってもらった。
そして、私は宵藍に運ばれ、自分の部屋へといった。
そこには、水鏡で様子をみていた天后が布団をしいてまっていた。
「天后。」
「お帰りなさいませ。様。」
「ただいま。」
すると、宵藍がゆっくりと私を下ろす。
「ありがとう宵藍。」
「・・・あぁ。」
どうしたことだろうか、喫茶店のあたりから、宵藍が直視できない。
どうしたの、私。
ひとまず、自分の体内にある瘴気を祓う。
「この声は―」
・・・・・・・・・
そのとき、恵梨ちゃんは、客間で、天一と朱雀と話をしていた。
「でね、あのがようやく恋に目覚めたみたいなのよ。」
「ほぉ。人間か?」
「朱雀、様はあまり、男の方とお話をなさらないわよ?」
座り込んで話をはじめる神将と恵梨。
「じゃ、ヒントあげるわ。神将のだれかよ。」
その話を聞いた瞬間、俺は、どうしたものか、と苦笑する。
神将の誰かを好きになったと恵梨は言い放った。
あの大事に大事に守ってきたが。
きっと、あの父親が黙ってはいないだろうな、と思いながら、自分の同胞の男神将を考えてみる。
「騰蛇。何をしている。」
「六合か。」
六合、彼はどうだろうか、女神の血を引くは、木将と中がいい、そして水将とも。
といいつつ、彼女は、神将全員と仲がいい。
本人が家族、だというほどにその絆は強いものだ。
「実はな―」
話が終わったあと、六合は言い放った。
「それならば、青龍以外には考えられない。」
「青龍?」
青龍は、だれよりも、を大事にしてきた。
それは、あの青龍が、を幼きころよりずっと近くにいたのだ。
だれよりも主を求め、だれよりも、主との絆が強い。
それが青龍だ。
「俺たちは、きっと惹かれている。」
「あぁ。」
「けれど、きっと青龍ほど深い愛ではないと思う。」
それは女神の性質上に錯覚が起きている。
確かに彼女はいとおしい。
主を、と。望むほど。
ずっと共にいたいと思うほど。
けれど、きっと、愛であっても、家族愛のようなものだろう。
女を好きという、それとは違う。
青龍ならば、認めざるを得ない。
青龍ならば、大事にしてくれる。
誰よりも、主を大事にして、誰よりも不器用で、
誰よりも、違えることのない。
「太裳もきっと、青龍と同じくらいがすきだろう」
「あぁ。でもそれは性質が違うだろう。」
女で主。
大事に大事に。
大事にしすぎて、こうなった。
「ならば、俺たちは不器用な同胞のためになにかしてやるか」
「無駄なような気もするがな」
いつかのような殺気をみせなくなった青龍。
俺が昌浩を光としていたように。
青龍には、が光となったのだ。
ならば、それを見守るのもまた役目だ。