4.おいて行く者行かれる者。
≪……起きろ。≫
女神の神殿から帰ってきたは神の力を全回復させた。
もとより、人間の肉体で封じ込めているが。
神の力を発動させたら、肉体と同調が取れない。
ゆえに熱や風邪がおこったりするが…。
今は回復している。人間の肉体はになじんでいる。
はずなのだが・・・。
いや、こいつの寝起きの悪さはいつも通りだった。
特に神とか関係ないか。
「ぐ・・・・れん?」
ぼーっとしているを見てうなずく。
今日のこいつを起こす係りは俺になっていた。
隠形していた姿から顕現する。
「あぁ」
「今日学校だったっけ?」
≪今日は休日だ。というより連休だ。≫
六合の声が聞こえる。隠形していても普段のなら見えてしまう。
にもかかわらず姿が見えないということはまだ寝ぼけているのだろう。
「ふあ・・・今何時?」
「巳・・10時だ。」
時計をじっとにらむ。
指してる時刻が10時と少し過ぎ。
明らかに寝すぎだ。
それに今日は、恵梨ちゃんの彼氏の壱くんを見に行くんだった。
もちろん、恵梨ちゃんも一緒に。
約束は午後1時だから、十分間に合う
「えっと。それじゃ今日は誰を・・」
≪俺が行く。≫
すると、異界からちょうどやってきた宵藍が返答する。
「俺もいくぞ。」
「私もついていっていい?」
「我も行きたい。」
ぞくぞくと顕現する神将たち。
神将たちは待つことよりも一緒に行くことを望む。
晴明さまか昌浩さまのときに何かあったのかは知らないけど。
闘将の宵藍と紅蓮、風将の太陰と水将の玄武。
・・・。不安だ。
すっごく不安。
なにがって、紅蓮と宵藍はよく喧嘩するし
太陰は暴れて玄武が必死になって止める姿が目に浮かぶ。
すると私の様子を見ていたのか、勾陣と白虎が姿を現す。
「私もついていこう。」
「保護者は必要だろう。」
喧嘩したときに、宵藍と紅蓮を拳骨で止める勾陣と
太陰と玄武の保護者的存在の白虎が一緒なら安心だろう。
人が多い気もするけれど。
多くて悪いことはないし。
天后は水鏡をつかってほかの神将たちと私たちを見るようだから、
危なくなったら、すぐほかの神将たちもくるだろう。
「とりあえず、早く着替えたらどうだ?」
勾陣が指をさす。
私の格好は単衣一枚だ。
「うん。そうだね。」
「いくときになったら我らを呼ぶといい。」
と玄武がいうと、闘将以外が隠形する。
そして異界へと向かった。
「玄武たちが異界にいったってことはいるんだ・・・。」
「あぁ。俺たちはあまり会いたくはないんだがな。」
紅蓮が苦笑する。
そう神将たちが会いたくないのは、私の父親だ。
基本、父親がいるときそばにいるのは宵藍だ。
じゃないと手のつけようがないのだ。
たまに宵藍でも負けるときあるけど。
口で。
急いで着替えて居間に向かう。
紅蓮は隠形している。勾陣と宵藍は顕現したまま私の後ろをついてくる。
「おはよう父さん。」
「おっはよー!ちゃん!今日もきれいだね!さすが父さんの子!」
といい、私に抱きつく。
ベリッとそれを引き剥がす宵藍。
主に抱きつく者をみて腹をたてる青龍。
「・・・貴様。」
「青龍。親子の愛を邪魔するなんて最低な親だな」
「ダマレ!この三流陰陽師。」
父親と宵藍のこれは毎度のことながら慣れない。
宵藍はたまに本気で大鎌を召還するから。
しかし勾陣はそれを無視し、顔を洗って来いといった。
私はうなずいて洗面所に向かう。
顔を洗い終えてタオルを手探りで探す。
隠形していた紅蓮がタオルを私に握らせる。
「ほら。」
「ありがとう紅蓮。」
ガッシャーン!
居間から音がする。
始まった。
「紅蓮。とめるの手伝ってよ。」
「悪い。俺は自分の身がかわいい。」
宵藍と父親は紅蓮の相性に合わない。
けれどこれをとめるのは一苦労だ。
居間に戻ると、ちょうど勾陣が二人を成敗していた。
ゴン ゴッ
「やめんかお前たち。」
いいのかな…神将が人間を拳骨って・・・。
「大丈夫だ、こぶができるくらいだ。」
「いや紅蓮、それでもだめなんじゃ・・。」
ひとまず落ち着いて座り込んで話す。
「そうだ、今日は恵梨ちゃんも一緒なんだよね?」
「うん。そう。」
「気をつけてね。父さん心配で心配で」
涙を流すふりをして宵藍が
「貴様より十分安心だ。」
「うわっひどっちゃん。青龍ひどいんだよ」
「父さん。大人気ない。」
「父親の威厳まったくなしだな」
これ以上、父さんの会話に付き合っていたらご飯が食べれなくなる。
だから父さんが苦手なんだよね、神将たちは。
こう娘溺愛しすぎで、もうただの阿保だし。
どうして母様はこの人を好きになったんだろうか
そもそも恋愛なんてしたことないからわからない感情だが。
「まぁ、冗談はおいといて、青龍、騰蛇。勾陣。娘をよろしく頼むよ」
「お前に言われるまでもない」
フンとそっぽを向く宵藍をみて父さんは穏やかに笑う。
「それじゃ、ご飯たべようか。」
「じゃ、父さん久しぶりにの作ったパスタがいいな」
「わかった。」
私が成人になれば、この父親と直接会うことは少なくなる。
女神をつぐのは、まだまだ後だが、
成人になれば、この京都の地を離れ、日本中をみて回る。
それは、私が陰陽師で、神将たちの主になったころより決めていたことだ。
だから、ふざけた会話でも、
思い出として、
少し少し
ためていこう。
先に逝ってしまうものとずっと残るものだから。
いつ考えてもさびしいものだから。