3.大事な家族




泉に入り込み2刻ほどたった。4時間くらいだろうか、異界には時計なんてない。
もちろん持ち込めばわかるのだが、異界にまできてとくに急ぐこともない。

ただ、身体を清めるだけ。
水音がピチャンと跳ねる。

ずっと待っている勾陣と天后と青龍は心配をしていた。
もちろん、家にいる神将たちも。きっと遅くなることはわかっているだろうけど
でも、私にできることは早く全回復することだ。

夜警の時にぶっ倒れでもしたら、紅蓮は怒るし宵藍は睨むし、
六合は無言で攻めてくるし。勾陣は天后といっしょにずっと責めてくるし、

天一は悲しそうな顔をするし
天一が悲しそうな顔をさせてる私を朱雀が攻めるし

太陰はむだに説教たらしてさらにその説教に玄武と白虎が突っ込むし、
太裳はずっと家からださないだろうし天空の翁は呆れるだろう。


様、泉に入られてからだいぶたつけれど。」
「そうだな、神姫だが体は人間だしな。」
「・・・・あとどれくらいで回復するんだ」

神将たちは女神に問いかける。女神はさらっと流す。
『あと一刻もすれば回復する。心配するな、ここは清浄な地だ。出雲の泉のように眠りにはつかないがそちらよりは早く回復するはずだ。』

「そうですか・・・確かにここは私たちの異界ともちがいます。」
「あぁ、ほかの神々ともつながる通路があるからな。」

女神の位は高い。神将たちなんて簡単に捻じ伏せてしまうほどに。

「・・太裳か?」
青龍が、近くに同胞の気配を感じる。
どうやら隠形してきたようだ。
女神の姿を見つけるとすぐに顕現する。



「お久しぶりでございます。蒼月の女神。女人の場でありながら青龍ともども非礼を申します。」
『お前たちはあれを守るもの。別にかまわぬ。』

深々とおじぎをする太裳。
それをあっさりと返す女神。女神は蒼月女神という。しかしそれは高唹の神と同じで特別な名だ。
正式には蒼月華という。

「人界にて、神将がまっておりますが、大分待ってもこないため、どれほどかかるものかと様子見を。」

あえて、天一がこなかったのは、朱雀が離さないから。
太陰がきたら、対処がしきれないから。


「待たせてごめんなさい。もう大丈夫。」
残り一刻も待たないうちに泉からが上がってきた、もちろん服は天后がもっているため、布一枚巻きつけているだけである。



「・・・・。お前恥じらいをもて」
「そうですね、さすがに我らを意識していないようで悲しい気も。」

といい宵藍と太裳は神殿のほうで待機するといい、いってしまった。

「恥じらい?今更じゃない?」
勾陣にきいてみる。風呂に入れられたのはなにも女神将だけではなかったはず。
幼きころの話だが。

「いや、あれらの言い分はもっともだ。」
「えぇ、もう少し慎みをもたれたほうがよろしいかと。」
はぁ、とため息をつく天后たち。母親に関しては

『あれらがよくお前をそばにおいて耐えているのが不思議だ。』
と意味がわからないことをいっていた。



急いで服を着ると、神殿へと向かった。
この母親の神殿は、青い透明な水晶の石でできている。
もちろん透明でも無色透明ではないのだから、遠くのほうまで透けて見えるわけではないのだが。

そしてその周りをたくさんの花が囲んでいる。
無駄に広いここは、ほかの神が訪れる場でもある。

といっても、神将も私も神の眷属だが。

『それでは。力も回復したようだ。昌賢によろしく伝えてくれ。』
「父さんにもたまに会いにきてやってください。」
『気が向いたらな。』




そうはいうが、父親をもっとも愛しているのだ。
女神はあまりこの地を離れられない。
もちろん出ることは禁じられてはいないが、自分のことがよくわかっているのだ。
女神である責任というものを。



「では母様。また来ます。天后、勾陣、宵藍、太裳いこう。」
「えぇ」
「あちらで皆が待っています。」

母親とはめったに会えないが、私にはこんなに素敵な、大事な家族がいる。
昌浩様や晴明様がたとえるには朋友とよんでいたらしいが、私にとっては生まれてからずっといる家族



大事な、大事な


大切な


人たち。

だから守られるだけじゃなくて、守るの。

支えられるだけじゃなくて支えたいの。

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