2.運命よりもお前だからこそ
大きな神殿がある。そこは異界と呼ばれるところ。
しかしそこは神将たちが集う場所ではない。
そこは女神の住まう神殿。
「母様、久しぶりです。」
『。久しぶりね。あいかわらず私に似てるわね。』
母親の顔はをもっと大人びた感じ。
母親は月の女神。花と氷を操る。
月の属性のものならほかにも操れるが今のところ判明しているのはその二つ。
「母様。窮奇の残党は退治してくれましたでしょうか?」
そう、もとは、自分がやるはずだったが、
窮奇らは巨椋池にいた。
しかしそのほかの地で活動していた異邦のものは調伏しないで帰ってきた。
神気を爆発させたためである。
『えぇ、氷の彫刻となってるわね。しかし、、貴方はまだ完全に神の力を取り戻していない。泉につかり養生なさい。』
「わかりました。」
もとより、ここの泉につかるために来たのだ。
は人間だ。それは今だけ。
成人してしまえば、与えられた仮の肉体から出て、女神の後をつぐ。
それもまた、この女神がいなくなってしまえばの話だが。
つまり、首を落とされたり、致命傷を負わぬ限りは神将たちの主でいられるのだ。
神気を開放しているときは神将たちと同じくらいの力。
神となれば、その力は計り知れない。
すべての衣を脱ぎ、泉に入る。
ここまでの護衛は勾陣と青龍と天后だ。
もちろん青龍は神殿で控えている。
衣を天后に預け、泉付近に勾陣がいる。
実は、ここにくるのは3度目で、母親と対面するのは5度程度。
それほど、人として生きていた。
「今回は時間がかかりそうだ・・・。」
深くもぐり込み目を閉じる。
『青龍。あなたはなぜここまで来たのかしら?』
「あれの護衛だ。」
『勾陣だけでもよかったのではないのかしら。』
実は、ここは女人だけの場所だったのだ。
それでもここにきた青龍が咎められないのはを守る神将だから。
「・・・・。」
『そう、そうだったの。あれは私を継ぐもの。女神は愛に溢れている。好かれるのもまた運命。』
「ちがう。女神だとか関係のないことだ。」
女神は愛を与えるもの。しかし青龍は女神でなくても、といったのだ。
「俺たち神将はあれが神姫でなくても主にしていた。」
確かに霊力と見鬼が優れていたからというのもある。
「あれの人間性に惹かれただけだ。認めたくはないがほかの神将もな。」
『騰蛇、太裳、六合か。それに人間界にもあれを求めるものがいるようだ。』
母親として、それはうれしいことだった。
の父親とあったとき、はじめて己が女神であることを呪った。
女神であるから、愛を与える存在だから私を愛してくれたのでは?と思うから。
それは杞憂にすぎなかったが。
『しかし、女神であって惹かれたのも事実だろう。お前は木将であり、水の性質も持ち合わせているのだし。』
「・・・・フン。あれはあれだ。」
青龍は、もう二度と、失いたくなかった。
いや青龍だけではない。ほかの神将だって、二度と自分よりも先に逝ってしまう主を見たくなかった。
その願いを聞き届けたのか、生まれてきた子は神姫だった。
簡単には死なず俺たちの元に。
女神をつぐその日まで、俺たちの主に。
いや、女神になっても離れることはない。
俺は。あれを愛している。