8.太陰編

風が変わった・・・。

太陰は、ふっと空を見上げると自室にこもっている主を遠くから見つめた。
今日は物忌み。


平成では、物忌みなどというものが学生に通用しないけど、毎晩の夜警の疲れがたまったのか
熱を出してしまった。

「早く元気になってくれればいいけど。」

太陰にとって、落ち込んでいたりする主はどうやって接すればいいのかわからないのだ。

「晴明のときも、昌浩のときも・・・私ってば、役立たず・・・」


早く元気になってもらおうと、天一と一緒につくろうとしたけど、逆に迷惑を増やしてしまった。
傍にいたいと思うけど、その居場所は青龍のもの。



「はぁ・・・」

とため息をつくと、後ろに同胞の気配を感じる。
異界から降りてきたのだろうか。

≪太陰。どうした?≫
「勾陣。」

すると。顕現して、屋根の上にいた私の隣に座る。

「ふっ。気にするな。我らとて、なにもできないこともある。」

勾陣はわたしたちをよく理解している。

「青龍は、ただ傍にいることしかできない自分を悔やんでいる。天后は、天一のように自分に治せないことを悔やみ、天一は病気は治せない自分の能力を悔やむ。」
「でも・・。」

でも、なにか、している。
青龍は傍にいる。
天后は着替えさせたり、汗をぬぐったり、
天一は料理をつくったり。

私だってなにかしたいのに。

「ほかの神将たちだってそうだ。元気になってもらいたいと。なにかを考える。主が戦えない今、神将たちは変わりに見回りをし、屋敷に結界を張る。いつもとかわらないんだ。」
「だけど、勾陣。私はね。なにもできない自分は、必要じゃ・・・ない・・・かもって・・・」


「我らの主はそこまで、ひどいやつだったか?」
「ちがうわ!は家族みたいに寄り添ってくれればいいって!・・・あ」

そう、そうだったのだ、なにもせずに、いつもどおり、
家族みたいに。

「私・・間違っていたわ…青龍がの傍にいたって、それは前と変わらなかった。はただ家族として心配だけしていれば…」
「解っただろう?実際家族なんてのはそういうものだ。昔を思い出してみろ。吉昌なんてずっとあわててただけだ」

「そうね。私!のところいってくるわ!お見舞いするの。あ。花でももっていったほうがいいのかしら?」

といってくるわーとだけいい嵐のように飛んでいった。
勾陣は、飛んでいった同胞をみて微笑むと

「私も、太陰と同じように悩んでいたんだがな。」

何かしたいと思っているのは、みな同じなのだ。



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