7.六合編
「うー? さい!」
まだ、彩輝とその幼子は完全には呼べなかった。
俺は、教えるつもりなどなかったが。
この幼子の笑顔をみていると、いつの間にか教えていた。
「しょーあん?・・・れん?」
まだ、人の認識もはっきりしないのか、あてずっぽうに教えられた名を順番にいっている。
「・・・・彩輝だ・・。」
「さい!」
とにっこりと笑いながら俺の手をぎゅっと握る。
その後、教育係りの青龍が俺を睨むのは目に見えていた。
が成長するにつれ、
俺を彩輝ではなく、六合。と呼ぶようになった。
夢でみたと。いっていた。
重要なときだけ晴明が、俺の二つ名をよべといったといっていた。
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「うーん・・・この公式意味不明だ・・。」
授業をうけ、しっかりと黒板に向かう主を、隣で護衛する。
騰蛇と、勾陣は見回りにいくと、いいしばらく帰ってこないだろう。
青龍は、相変わらず。後ろに控えている。
≪・・・・。ここにあれを入れればいいんじゃないか?≫
なんとなく、そう思って、Aとかかれた公式に当てはまるところをxに持っていけと、指で示す。
すると、本人も納得したようで、プリントの脇に、
六合、ありがとうね。
とすらすらと書いていた。
授業で、神将たちをよぶことができないときは、こうやって筆記で会話している。
それもまた、俺たちにとっては新鮮だった。
しかし、悪いことではなかった。授業のときも受けながら、気にかけてくれるのだから。
「次の問題、安倍さん。」
教師が、を指名する。
男の教師だったら、青龍が睨んでいただろう。
あいつは、こいつに興味がある。と
むちゃくちゃなことをいって。
しかし、俺たちからすれば、青龍が、を独占しているだけに見える。
すらすら、と答えを黒板に埋めていく。主の姿をみて、
平和だ。と思ってしまう。
こんな平和だから、俺たちは必要ではないのだろうか、と思ってしまうこともあるが、
それでも、俺たちを求めてくれる主のために、応えたいと思った。
放課後に、青龍が、戻ってきた騰蛇と喧嘩をはじめ、勾陣がそれを止める。
俺はただ、みているだけだったが。
「・・・・彩Wもとめて。」
とその二つ名をよぶ声で、俺は動いてしまう。
くだらないことで喧嘩をしていても、神将が互いにけなしあう事は、にとっては
とても、嫌なことだから。
怒るときや、悲しいとき、本当に大切なときだけ、俺の名を呼ぶ声。
でないと、ありがたみを感じなくなる。
だろう?晴明よ。