6.天空編
「てんくー。」
まだ、幼子という歳のころは異界にと遊びに来ていた。
「様。そこに段差がありますので、お気をつけてください。」
太裳が、微笑みながら、いう。そばには、天后も控えている。
しかし、いつもそばにいるはずの青龍がいないことに気づいた翁は天后に聞く。
「天后、青龍はどうした。」
「それが、高淤神の命で、闘将たちが出払っているのです。太陰が風で運ぶといったのですが人数が多い為白虎も。結界をはるものも付いていきました。」
つまり、騰蛇・勾陣・六合・青龍。太陰・白虎。天一・朱雀・玄武が一同に出払っているということだ。
「あちらにいるよりは、異界にいたほうが安全だと思いつれてきたのですが・・・。」
「まぁ、久しぶりに会い見えるのでな。かまわんが。」
幼子であるをみて天空は思う。
どうして、もっと早くこの世に生まれてこなかったのだろう。と。
少なくとも、この千年の間、待ち続けるのは、とても寂しいものだった。
晴明と昌浩の命日のおり、とても、神将たちはさびしく過ごしていたのだ。
もとより、神将は、誰かに仕えるためにいるものではないが、
その心地よさをしってしまった。
「儂は、異界からあまり動いてはおらんのにな。」
「うー?」
そばにときたがじーと見つめている。
「さみしー?かなしー?」
ごくわずかな空気を読み取るこの娘は、間違いなく我らを統べる主になるだろう。
だが、時がまだ早い。
「この爺と約束してもらえんか?よ」
「?」
「自分で決めたことは違えぬことだ。」
よく意味はわかっていないだろうけれど。
はにっこりと微笑んで
「うん!」
といった。
年のころ13、中学校一年生になったが、見鬼をとりもどしたときの昌浩と同じ年になった。
数えは違えど。
「私は、誰が認めなくてもいい。大切な人を守れる陰陽師になりたい。」
この世では陰陽師とうのはインチキだのいわれたりする。
すべての人に認めてもらうことは望まない。
けれど。はそういったのだ。
「私は、大切な家族を守りたい。父さんも母様も、高淤の神も。神将たちも。」
その決意は、とても強いものだった。
だから、このとき、儂らはを正式に主と認めた。
かつて、朋友だと呼んだ主。
そして、今は。家族と。
いつの時代も。安倍のものは、面白い。
「いかがなされました?翁」
昔のことを思い出していると、太裳が、不思議そうにして聞いてきた。
「なに、少し、主というものたちについて考えておった。」
「そうですか。そういえば、晴明様の命日はもうすぐでございましたね。」
晴明の命日には、安倍家が総出で出てくる。
分家のものも。安倍の直系の者は晴明のところに来る
「今年も、晴明に話がたくさんできそうだ。もっとも晴明を気にかけていた青二才があんなにも変わったことを。」
晴明が与えた名のように、穏やかに笑うことも今では、見れるようになった。
かつてのように、騰蛇とのわだかまりも解けた。
本気でぶつかっているのも、性格の問題で、血濡れの咎は誰も言わなくなった。
ついでに、昌浩のところにも顔を出してやるか。
お前たちを継ぐ我ら神将の主はよくやっていると