4.天后編
とたたたた。
簀子を歩く音がする。
そしてその後を、必死に追いかける姿が見える。
「様!お召し物をきてください。その格好では風邪をひかれてしまいます!」
の格好は俗にいうタオル一枚巻きつけた姿なのだが。
「家の中だもの。大丈夫よ。」
「ですが、その姿は目の毒でございますよ。」
もちろん男の神将にむかってのことだが。
「大丈夫。父さんいないし。」
「いえ、そちらではなく。」
天后は困っていた。
まったくもって女らしくないこの少女の対応に。
恥じらいというものがかけていたり、
母親が愛を与える女神というのにその点まったくの鈍感だったり。
闘将や天空がいってもさほど聞かず。
いったいだれがこのお方を静めることができるのだろうか。
≪まったく。お前はなんという格好をしているんだ。≫
「宵藍。」
隠形した青龍が、眉間にしわを寄せていう。
≪天一がなくぞ。≫
「うっ・・・じゃ着る。」
「はじめからきてくださればいいのに」
天后から溜息がこぼれる。
まさか、天一の涙に弱いとは。
そしてそれを知り尽くしている青龍はやはり幼きころから世話をしているだけある。
騰蛇であれば、きっとその格好でいるの前にいられる筈もない。
六合であっても隠形したままどこかへといってしまうだろう。
この少女は、人並みには恥じらいを持ってほしい。
主たる素質は大いに認めるが。
ただ、女らしくしてほしかった。
その姿は美しいのだから。
男のように振舞わなくても、と思うのだ。
「天后ごめんね。」
「いえ、もう慣れました。」
でも、変わらないでいてほしいと思う。
一人で何でもできてしまわれたら、私たちは要らなくなってしまうのではないかという不安もあるのだから。
「さすがに父さん帰ってきたみたいだしタイムリミットだね。」
といい、服を着る。
きっと、このお方が恋をすればきっと恥じらいというものが出ると思う。
きっと、このお方が恋をすれば私たちは・・・。
「天后はお姉さんみたいだね。私の大切な家族だよ。」
とにっこりと笑いながらいって部屋へと戻っていく。主をみては
「姉ですか・・。様が妹ならばしっかり守らないといけませんね」
ただ、その一言だけで救われる。
大切な主で、大切な家族。