2.太裳編



「太裳ー救急箱ってどこだっけ?」
「それでしたら、右の棚に・・。」

自分の主をみては、言葉を失う。
肘から、血が流れている。

様?!お怪我を!?」
「あー大丈夫大丈夫。夜警でちょこっとドジしちゃっただけだから。」

そういう主をみては、神将ではあるが寿命が縮まってしまうのではないか、と思う。
怪我をしているところをみると、内心大慌てだ。


そういえば、昔もこういう風に怪我をしたことがあったな、と様がつぶやく。

あの時は…。そう、8歳くらいのころだろうか。
父親に梵字の読みを教えてもらったり、式や符の作り方をならっていた様。
たしか、そのときに見えてしまったのだろう。

「あれは!?」
そう、小さい妖を。
見ていてはほっておけない性格だから。

そのとき様は闘将と約束し、結界内からでないようにといわれていた。
学校や特別な日以外は。

ちょうど、庭には大きな木がある。そこに上って、妖を調伏していた。

「臨める兵、闘う者、皆陣列れて前に在り!」
しゅわっと、溶けるように妖はきえていった。
そこからが問題だった。



ちょうどそのとき、私は、見えたのだ。様が木上にいるとこを。

「!?様!?危ないです。動かないでください!今いきますから」
「へーき・・たいじょ・・」

すると、手をついていた枝が突如折れた。
上から様が降ってくる。

「きゃー!」
様!っ・・」

慌てて抱きとめようとするが、そのまま腰を地面につけていた。


「!?たいじょ!血!・・っく・・ごめんなさい!」
「いいんですよ。様。貴女を護るのが私の使命ですから。」

きっと。この方は、我々を統べる主になるだろう




「でも・・・うわーん!」
様、お怪我を?」

軽く擦りむいただけではあったが、主に傷を負わせてしまった。
「たいじょーが、血が。」

自分が怪我をして痛くて泣いているのではないのか。
ならば
「大丈夫です。これくらいすぐに治りますから。」
「ほんと?」
「えぇ。本当です。」


この方は、自分よりも、他のものを一番に気遣う。
それが、ひどく嬉しく、切なく、暖かかった。



「あ、見つかった。」
「やって差し上げますよ。」
そう、あのときから、天一には内緒にしたいという様の手当ては自分の役目だから。
これは誰にだって譲れない。

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