8.闇に落ちた人間



-きた-


-あの忌まわしき方士の血族だ-



目的の神社につくと、あまりの邪気に驚愕した。
これが神が祭られている神社なのか?
本宮へ向かうと、そこには


「平山くん?」
「やぁ・・・安倍さん。」
「あれ?羽月さんは気に食わなかった?」

その言葉に神将は睨みはじめる。

「貴様か?」

「あぁ、そう僕はね、窮奇様にたのまれたんだ」
「人間のクズが」
宵藍が言い放つ。違う、彼は取り込まれている。
羽月さんとは違うやり方だ。


これは元となるやつをつぶさないと・・・。
ふと屋根の上からみえるものがあった。

「貴方ね。」

-よく気づいたな。ほめてやろう。わが名は孚-

鳥の形をした化け物が。
もう、巻き込まれた人間をみて、悲しくなるばかりだ。

始末をつけてやる。

「紅蓮、太陰。湧き出た雑魚を宵藍は私の護衛。」
「「わかった。」」

「安倍さん。僕をわすれているのかい?」
「いいえ、あなたはこれで十分よ。その行く先は我知らず、足を留めよ、アビラウンケン!」


「そこで見てなさい。」
「くそ。足がっ」
彼の中に入り込んだのは後からでも大丈夫だ。
あれをつぶせばどの道戻る。




「ナウマクサンマンダボダナン、ギャランケイシンバリヤハラハタジュチラマヤソワカ!」
集中して言霊を唱える。
「オンナウキシャタラニシダエイ、イダテイタモコテイタ・・・」

「神を呼び出すの?」
太陰が風で雑魚を倒しながら様子をみている。

「ナウマクサンマンダボダナン、ナンドハラウンドソワカ!」

キラキラと青白い光が孚に向かう。
が、孚は空へと飛び立つ。

よけられた。

「神が開放されない・・。」




こんなにも自分が無力だ。
もっともっと強くならなきゃいけないって言うのに・・。

「ねぇ。なんで梵字とかいうので攻撃できるの?」
ふと恵梨ちゃんのいったことを思い出す。

「神様って日本で生まれたのにインドとかの言葉でわかるのかしら・・。」


「日本の・・・言葉?」

-無力、無力!-

「黙れ!」
宵藍の大鎌が雑魚を切り裂く。




「・・・よ・・・自在を・・・えたえるものよ、輝ける・・・ものよ…あまねき帰依したてまつる、−除災の、星宿に」

「これは、昌浩のときと同じ!?」
「まさか。窮奇は同じことを!」

神将たちが目を見張る中はどんどん言霊を唱えていく。

「東方降三世夜叉明王!西方大威徳夜叉明王!南方軍多利夜叉明王!北方金剛夜叉明王!」

のちに神姫の姿に変わっていく。

「圧伏せよ、浄めたまえ、摧破したまえ、呪縛の鎖を打ち砕き、出でよ!罔象女神!」

神々しい神の気が、孚を消滅させる。
平山の中に踊っていたものも消えうせる。




『きゃー!ありがとう!ずっと閉じ込められていて大変だったの!』

そこに現れたのは、美しい姿をした10才くらいの子供。

「え・・罔象女神?」
『そうよ!あなたは、女神の子ね。高唹からきいてるわ!』

妹のようなやつだ・・・。
そういった貴船の龍神の声が頭に響く。
納得。

「罔象女神。」
『違う。あなたは恩人だから弥都波って呼ばせてあげるわ。』
「では、弥都波の神。あなたを封じ込めた異形。どこにいるか分かりますか?」

『えぇ。ここからまっすぐ言ったところにおっきな池があるわ。』




。その池はおそらく巨椋池だ。」
「窮奇は悪趣味だな。同じことをするとは。」
「でも、それだと、別に転校しなくてもよかったんじゃない?」

神将たちは口々にいう。

「窮奇は巨椋池にいる。けれどほかはそこにいるとは限らない。」
『そういうこと。そのほかにもいくつかバラバラに活動してるみたいだし。』

神将たちは、はぁ、とため息をついた。

「長期戦とはこういうことか。」


しかし、窮奇の居場所はわかった。
あとは窮奇から吐かせればいいだろう。


陰陽師って疲れる。
女神のほうが楽だ。と少しおもってしまったであった。

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