捌 譲れない



が眠ったあと、青龍はふっと勾陣らがぬかった方角をみる。
いまだに妖気が消えないということは、手間取っているのだろうか。

六合と勾陣と太陰がいっている、騰蛇がいってはいないのだから、自分がいく必要も無いだろう。
第一にここから離れることがためらわれた。

だれもいないと。はいったのだ。
もう、一人ぼっちだと。

「俺は・・・どうしたんだ・・。」

自分の気持ちに戸惑いを感じる。
主でもないのに、傍にいたいと思う。

だれよりも共にいたいと思う。

「昌浩の後世だから・・・か?」

それでも、自分の中でそれは違うといっているような気がする。


≪どうやら、お困りのご様子ですね。≫
≪青龍は意外と鈍いようだな。≫

と同胞の声が聞こえる。

「何用だ。」
というと、声の主は、ふっと神気を強め顕現する。
土将、太裳と火将、騰蛇。

「いえ、なにやらお困りのようでしたので。」
「俺は、勾に用事があったんだが、調伏にいっているみたいだしな。こっちのが面白そうだ。」

青龍はちっと舌打ちをすると、あぐらをかいて座る。
太裳と騰蛇は互いに顔を見合わせ笑い、その場にと座り込んだ。




「こいつが昌浩の生まれ変わり・・・か。」
騰蛇は少し寂しそうにした。
太裳もまた、少し顔を悲しそうにしていった。

「でも、この方は、この方でしょう。昌浩様ではない。」
「そうだな・・・。ところでこいつの霊力は半端ないな」

そういうと、青龍は頷いた。

「今まで、いろんなやつを見てはきたが、ここまで霊力が高いのに気づかなかったのはきっとこいつの父親が結界を張っていたせいだろう。」

父親の結界の中にいたとしゃべっていた。
そしてその父親がもういないといっていた。

ならばこれからだれがこいつを守るのか。


違う。もう答えはきまっていたのだ。

「俺が・・・昌浩と晴明以外に守りたいと・・・思った」

これは誰にも譲りたくないこと
それは、俺が、きっと


こいつに惹かれていたんだ。
昌浩の生まれ変わりとしてではなく。

ただ一人の少女を。を。

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