陸 十二神将



「何用だ。」

と青龍が問うと、壁の隅から突然姿を現した黒髪美人な女性がにこりと微笑んで口を開いた
「なんだ、気づいていたか、なに、我らの名が聞こえたのできてみただけだ。」

「ちっ 地獄耳が」
「地獄耳、か。我ら神将全員に届くということは、みな地獄耳となるが?」
舌打ちをする青龍に軽く交わすこの人はいったい?

「あぁ、勝手にあがってすまないな。私は十二神将が土将、勾陣と申す。」
「勾陣さん。ですか。」

ふと、先ほど青龍が書いた、紙をみる確かに、土とかかれたところに勾陣と書かれている。



「はじめまして、です。」
「知っている。我ら神将は、青龍が興味を抱いた女子を、ことごとく興味抱いている」

というと、青龍は、横を向く。
勾陣がふっと笑うとこっそりと耳元でいった

「あやつが人間に興味をもつこと自体が例がない。」
「そう・・・なんですか。」

それを聞いて、うれしいな。と思ってしまったのも事実。
そして、昌浩。という人が絡んでいるんじゃないか?と思うのもまた事実。




「安心しろ。昌浩はお前の前世なだけで、別に我らは昌浩をお前に求めているわけではない。」

という勾陣は観察力がずば抜けているせいか、はたまた読心術でも身についているのかはわからないが、
私の不安を言いぬけた。


「それで、何をしにきた。」
「あぁ、それだが、翁からの言だ。人間とかかわり、守るというならば、一度我らの前でそのものを見定めさせよ。との仰せだ」

というと、また舌打ちをした青龍。私はひとまずお茶をいれようかな。と思いたちあがった。
すると、背筋から、ざわっと何かが這った。



気持ち悪い。

「なに・・・これ・・・」
紫のような黒いような煙みたいなのが、私にまとわり付いていた。

「!?なぜ。呪詛が?」

そういったのは、勾陣だった。
呪詛。たしか呪いという意味だっただろうか。ということは私がのろわれているのだろうか。しかし人とかかわることをしない私がなぜ?

すると、ふっとまとっていたものが消えると、それと同時に家に電話がかかってきた。



トゥルルルルル
高めの電気音が鳴り、あわてて、それをとった。
「もしもし・・・・」
『もしもし、こちら大上病院ですが、緊急で運ばれた、住職がその・・・・お亡くなりになりました。いますぐこちらに来ていただけますでしょうか?』

何が起こったのか、わからなかった。
病気なんてかかる人じゃないし。寺からでることも少ないので、事故なんてこともなかった。

どうして・・・?

頭が真っ白になった私は、受話器を床に落としてしまった。
青龍が、勾陣が何かをいっている・・・

けど何をいっているかなんて聞き取れないくらい。
私は、ショックが大きかった。






私を心配してくれる唯一の身内だった・・・・。兄は私を嫌っているから。
母が私を生んでそのために死んでしまったから。

だから、私は・・・一人になった。

本当に一人に・・・。


大切な誰かがなくすことがこんなに悲しいなら、人とかかわるなんて、しないと決めていた。
母が私のせいで死んだのだときづいた幼いころ。そのころから父以外はかかわらなかったのだから。


父が死んだ・・・私は一人ぼっち。

『一人じゃないよ。』

そう呟くのは、誰の声?

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