伍 横顔



青龍がうちに滞在するようになって一週間ほどたった。
異界というものがあるらしく、そこにもたまに行ったりするようだが。
なぜか、うちに出入りしている。

しかし、それも嫌ではないので、不思議だ。
誰かとかかわることを極端に嫌っていたのに。

本日は休日なので、家で暇をもてあましたがどうせだから、と聞きたいことを聞いてみる。

「青龍。なんでここにいるの?」
「・・・・お前の霊力が半端ない。また妖に襲われる。」

言うことだけ、いって外の景色を眺める青龍。
その横顔は、なぜかいつも険しい表情をしているのに、穏やかだ。



「ねぇ、私の前世と青龍がかかわりがあるの?」
「・・・・あぁ。」

私は、不思議だった。
どうして、前世というのに、体をのっとられたり、
脳内に響く声が聞こえたりするのだろうか。
前世というよりも守護霊のごとく、ついているという感じだろうか。

生まれ変わり。といっても私は私だし、
第一、また変な妖に襲われるとなるのも嫌だった。

父親が小さな妖としゃべっているのを幼いときにみていたりしたが、
だんだんと寺の結界がつよまりそれもなくなっていたな。と思う。



この都会で、学校に通うために、親元を離れているけれど。
私の将来については悩むことがたくさんだった。
兄が住職になることはもう決まっている。
私はどんな職について、どんな道を歩むのだろうか。
この歳になると、将来が不安でしかたがない。

「そういえば、青龍って十二神将なのよね?」
「あぁ。」

「ってことは、ほかのも青龍の仲間がいるの?」

十二とつくくらいだから、十二人いるのだろうか。と疑問を吹きかけると、
青龍は、はぁとため息をついて、こちらを見る。

「本でもみて自分で調べろ。といってもお前は調べないんだろう。」
「まぁね。昔の蔵書は触りたくないし。」

幼いころ、寺に保管されていた本を手に取ったら、
へんな妖に憑かれそうになって大変だった。



「陰陽五行は知っているか?」
「えっとー。たしか前にテレビでやってたような火と水と。木と土と金。」
ファンタジーもののドラマだったような気がする。
それにたしかにそういう四大元素とかいろんな設定があったような気がする。

「俺は木将。つまり木だ。同じ木将には六合がいる。」
紙に、六合と漢字で書く。
おもわずろくごう。と呼んでしまったのは内緒にしておこう。

「六合と青龍が木将ね。」
なるほど。と思う。しかし、よくテレビで青龍とかみたりするがその性質は水ではなかったか?

「青龍ってくらいだから水将っぽいのに。」
「・・・・水将ではないが、龍の名がつくためか俺には水の性質も持ち合わせている。」


そうなのか。と納得してしまう。

「水将には、天后と玄武。」
すらすらと、星を描き、そこに火。水。木。土。風、と書き込んでいく青龍。
木の近くには、青龍と六合の名で、いまいった天后と玄武の名が水の近くに書かれていた。

「あれ?金って風なの?」
「金将ともいうが、操るものは風。風将と呼ばれる。太陰、白虎。」
「なんとなくわかってきた。よく四神っていわれる朱雀はきっと火将ね?」

「あぁ、朱雀と騰蛇」
と書いて、土将のところに、勾陣、天一、天空、太裳と書いていく。




数えてみると十二人だ。そういえば、と思う。
あまりしゃべらない青龍がここまで説明してくれているのには、
やはり私が昌浩というひとの生まれ変わりだからだろうか。

もやもやした気持ちが私を襲う。
なんだろう。このもやもやは・・・。

「・・どうした?」
「ううん。なんでもない。なんかいっきに勉強した感が。」
「お前が言い出したんだろう。」

といいため息をつく青龍が、いきなり眉間にしわを寄せて
機嫌をわるそうにしはじめ、何もない壁を見つめて低い声でいった。

「何用だ。」
「なんだ、気づいていたか、なに、我らの名が聞こえたのできてみただけだ。」
と黒髪の女の人が出てきた。

誰?

戻る