肆 相容れぬ
昌浩、と知らない名前を口にされて思った、あぁ、きっとこの人は私の前世をしっている関係者なのかな?と。
私は、とりあえず、割れた窓を片付けようと、立ち上がった。
物入から箒と塵取りをとりだし、ガラスをよける。
部屋から出ようとした、青龍は、はぁとため息をつき、近くに片膝を下ろして、近くにあるガラス拾い、塵取りへと入れる。
大きいものを集め終わると、近くにおいてあった掃除機をだし、細かいかけらも全部吸っておく。
「とりあえず、拾ってくれてありがとう。・・・窓修理しなきゃな。」
ひとまず、簡単にダンボールとガムテープでふさいでおいた。
それにしても、と思う。
あの、腹部が痛々しくて見ていられない。
「お腹・・・大丈夫ですか?」
「・・・・人でない身だ。治りは早いが、毒となると少し厄介だ。同胞に治療ができるやつがいる。そいつに不本意だが頼む。」
青龍は、朱雀に怒られるのがいやだった。
天一に絡むと、それはもう、闘将ですら、その殺気はすごいと思ってしまう。
それに、木将であり、水の性質をもつ自分の身は火将騰蛇と反発しあうように、朱雀ともまた相性が悪い。
ともあれ、この千年の間に、騰蛇の血塗れの件については、考えないようにしてる。
昌浩が主になったときに考えを改めた。それだけだ。
「・・・?」
「どうした。」
突然、不思議そうにして首をかしげるをみて、
何かを感じた青龍。
「声が・・・・聞こえて・・・。・・・あらじ。この・・・・神の声。まがものよ、禍者よ、呪いの息を打ち祓う、この息は神の御息。この身を縛る禍つ鎖を打ち砕く、呪いの息を打ち破る風の剣。妖気に誘うものは、利剣を抜き放ち打ち祓うものなり」
ふと、脳内に聞こえた声のとおり先ほどの犬を倒したときのように、同じ事をつぶやくと、
青龍の体内に入り込んでいた、呪という毒が消え去った。
傷跡もすっかりと消えている。
「・・・・お前、なぜ術が使える・・・。」
「え?」
「なぜ陰陽術が使えるのかと、聞いている。今でこそ、その術を。その言霊を使うものはいない!」
いきなり、怒声を上げる青龍を見上げる。
怖い。とても怖い顔をしている。
けれど、なぜか、またこんな顔をしている。と、思ってしまう。
すると、脳内に先ほどの声が聞こえる。
『ごめんね、君にこんなこと青龍に怒られるのは、おかしいから、少しだけ、体借りるね。大丈夫用がおわれば出て行くから。』
と、脳内に聞こえると、ふっと、意識がなくなる。
一瞬、倒れこみそうになったを青龍が片手で支えると、
の体を借りたものが青龍を軽く怒る。
「青龍。しずまれ。」
「・・・この気は・・」
「俺は、安倍昌浩だ。お前たちの主だった。」
青龍は驚いた、なぜ、ここにいるのだ。と。やはり、このものの前世がお前だったのかと
「普通、輪廻をするときに、前世の記憶は魂の淵に宿していても枷が外れることがない。でも。この少女ははね別だったんだ。」
青龍は、黙ってきくだけだった。千年もの間ずっとずっと、晴明と昌浩のことを忘れたことはなかったから。
「なぜ、についていた。お前ほどのものだ。来世くらい選べただろう。」
「青龍。これはね、俺にだって決めることのできないさだめなんだ。俺は。が通らなければならないさだめである関門を越えるときのためにこの少女を来世とされたんだ。」
昌浩は、ほかのだれでもないに、何かが振り下ろされる。と冥府の官吏に聞いた。
川の向こうにいたのに、連れ戻されたのは、輪廻を通して、生まれ変わることがその間にできなかったのは、
すべて、必然だったのだ。
「それにね、ここで、お前に会うことも必然だったんだ。宵藍。」
その言葉だけを残し、昌浩は、の体の中から、意識の枷を戻した。
今しばらく、眠ると。そういうことなのだろう。
「昌浩の・・・生まれ変わり・・。」
この少女が。あの晴明を超えた昌浩が、最後の仕事として付いた。
それがこの少女なのだ。
いったい、この娘にはなにがあるというのか。
昌浩は生まれ変わりなだけ、この少女とは、違う。これは相容れぬ輪廻の定め。