壱拾 食えない爺

ひさしぶりに、一人で外出した、最近では神将の方たちが一緒にいてくれるんだけど
どうやら今日は、全員で定期的にしている会議みたいなのがあるらしくて。

私は、兄が、海外に出張していると聞いて、
今のうちに父親の墓参りに行こうと思っていた。

相変わらず、ここは空気が美味しいと思う。
都会は確かにいいところか?と聞かれたら、まぁまぁと答える。
でもやはり、生まれ育ったここのほうが、落ち着く。

長い階段を上り終えると、お寺の隣にある墓地にいく。

大きく家と書かれたところに父は眠っている。


「あのね・・・お久しぶりだね。でもね・・・こんな形で再会なんてしたくなかったよぉ!」

私は泣き崩れる。
あの笑顔が好きだった。

もうみることができない。父の最期にも来ること叶わなかった・・・。

「うぅ・・・あのね・・・私・・友達できたんだよ。神様だけど。嬉しいの。」

霊力があることで、奇妙扱いをうけてきた。
友達はつくりたくても作れなかった。
裏切りがこわかった・・。

「父さんがなくなって一人だ、って思ったの。でもね・・・その人がいったの。守ってやるって」

お前は一人じゃない。俺が・・・俺たちが守ってやる。


「でもね・・私怖いの。・・・・だって永遠なんてないもの。いつか・・・はなれていってしまう。父さんみたいに」


でも一番怖いのは・・・すんなりと心に入ってきて、私を支えてくれた存在が・・・。
その存在が・・・居なくなってしまいそうで。


「だって・・私は・・・母さんを死なせてしまった。私の周りはいなくなってしまう。裏切りが怖いんじゃない・・私という存在で周りがいなくなってしまうことが怖いの!」


私は・・・生まれつききっと疫病神のようなものが憑いているんだ・・。

「・・・私は・・人を不幸にしてばかりよ。」
『そんなことはないよ』

ふと脳内で声が響いた。

『寺の中に入って?・・・そこに・・・いる人に話しかけてみて。きっといいようにしてくれる』
「寺・・・?」

父の後、兄以外に人が入ったのだろうか?


寺の中に入ると、広い和室に一人の老人が座っていた。
「おや、さんかな?写真を以前住職にみせてもらったことがあってな」
「はい・・・。貴方は?」

「儂は・・安倍人志というんじゃが・・・住職に寺の管理を任されたもんじゃ、遺言というもんじゃったが」

安倍人志・・父からも聞いたことがない人だ。
兄は知っているのだろうか。

「お前さんは・・・そうかそうか。」
「あの?」

『・・・この人。俺のじい様だよ。生まれ変わっても変わってないけど。きっと枷を誰かにはずしてもらっているけど』
「あの・・安倍昌浩さんを・・・しっていますか?」

思わず、それで聞いてしまった。

「おお、昌浩を知っておるか。ということは、神将たちにもあったのかの?そうか・・・目覚めたんじゃな昌浩。」

すると、スッと立ち上がる安倍人志さんはにっこりと笑い、座るように促した。

「座りなさい。」
私は、素直に座った。

「儂は、かつて安倍晴明というものだった。
来世として、さまざまなものに移ってきたが、ここまで同調して儂がでてこれるのはこれの体が安倍のものだから
それでな。お前さんは、昌浩の来世。それは解るな?」


「はい。頭の中でかたりかけてくる人が・・昌浩さんです。」
『じい様。説明まわりくどいからなぁ・・・』

とまた脳内に響く。

すると、人志さんは・・晴明さんはにこりと笑う。

「だが、じゃ。昌浩じゃない。そして安倍のものじゃない。だから、儂の用に完全に入り込まない。
安心なさい。実はな・・・この人志という男。自殺未遂を起こそうとしたのだよ。2,30年前だったがな。
それで、どこぞの神が降臨なされて、儂の枷をはずしたんじゃよ。そして、儂が乗り移ることで、今まで生きてこれた。
人志は、儂がいることで、生きているが、死んでいるようなもんじゃ。」

「そこで、一つ忠告じゃ。お前さんは取り込まれることはないがの。その分お前さんには災難の相が降りかかる。
そこで、昌浩が来世とされた理由でもあるがの。その災難の相は、やがて、人々、国、いろいろなものを滅ぼすだろう
それを防ぐのがお前さんの役目じゃ。・・・・神将たちが・・・儂のもとに集わないのはの。儂・・いま力がないからの。
なにも手出しすることはできんが、口を出すことはできる。」


「あの・・・災難の相って・・もしかして・・母も・・父も・・」
「その前兆にあるのは確かじゃが、必ずしも、お前さんのせいとは限らん。父親の方は呪詛じゃった・・・。儂は助けてやることができなかった」


力がないから。
かつて出来たものが出来ない。

けれど、

「私はそれが出来ると・・・」
「あぁ、別に今すぐどうこうという話ではない。・・・・・それと、昌浩。」

『じい様・・・』

「お前にしかできぬこともあるだろう。しっかりと支えてやるのじゃぞ?」

『はい。じい様・・・。』

「あと、宵藍のこともな。ほっほっほ。」
『・・・・・・・狸。』


そういうと昌浩は、出て着すぎました。少し寝ます。とだけいい。
声は静まった。





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