壱 出会い
この現代の世の中で、霊感というものがある私は、奇妙扱いをされていた。
友達もいなかった。というより、作らなかった。
裏切られるのが怖い。
私はとても弱いから。
それでも、あなたという存在に出会ったのは、必然だったのかしら?
深夜、どうしても、のどが渇いて、コンビニへと足を運んだ。
この都会、自宅の水道水は飲めたものではない。
田舎で生まれ育った私にとって、ここの水はどうしても飲めるものではなかった。
田舎といっても、一応、その県の中では、都会の方に部類されていたけれど。
コンビニで、炭酸飲料と、水、明日の朝ごはんの食パンなどをかごの中にいれ、レジに向かう。
ピッピという音がコンビニの中で響く。
深夜だからだろうか、店員も眠そうに、声はあまり元気なほうではない。
とくに気にもせず、コンピュータで割り出された代金を払うと、荷物を受け取り、外へ出る。
風が、さぁっと、吹き、私の髪をなびかせる。
ふと、前を、青いものが通った。
チラッとだけだけど、なにか、そんなものが見えたのだ。
もうとおりすぎたのに、なぜか胸の緊張感が、あれを追えといっているような気がした。
私は、本能のままに、そのまま青いものが通ったほうへと足を運んだ。
どうやら、すぐ近くの裏路地のあたりで、止まっているようだ。
ふと、みると、黒い犬のようなものと、その青いもの。ちがう。
青い布を体に巻きつけた人がその犬と戦っていたのだ。
「犬?」
ふと、声をだすと、犬は、ニヤリと笑い、私の方へ飛んできた。
すると、その青い布を体に巻きつけた青年は、チッと舌打ちをすると
犬を動きを止めようとする。
犬は、かまわず、私につめを振り下ろした。
私は、動くことができなかった。
やられる!
そう思った瞬間、鈍い音とともに、私の前にその青年が傷を負っていた。
犬は、それを確認すると、笑いながら、どこかへと消えてしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
思わず、声を出す私に対し、その青年は目を見開いた。
「お前、俺が見えるのか?」
「え?」
「・・・っ!」
動こうとした青年の体をよく見ると、先ほどの犬の爪が刺さっていて、とても痛々しい。
それに、毒のようなものがそれから吹き出ていた。
青年は、苦痛な声を上げると、そのまま、倒れこんでしまった。
意識のないその青年をそのままにできるはずもなく、私は、自分の家にとその青年を引きずっていった。
途中で気づいた。
軽い。と。そして、その格好と先の尖った耳を見る限り、人でないことがわかった。
俺が見えるのか。と聞いていたのだから、きっと霊感のある私だからみえるのだろう。
とだったら、私が青年を治療しないと、ほかの人には見えないのだから。
と思い、傷の手当てをするべく、家の中へと連れ込んだ。
今思えば、こんなことをしたのは、きっと自分の中では恩人だから、という理由が強かったのかもしれない。
けれど、きっと、どこかで、この青年に惹かれるところがあったのだと私は思う。