第五話 真心の光を見つけ出せ




この家にきてから早いもので、一月がたとうとしていた。

未だに過去を誰にも知られてはいない状態だった。

高唹以外は。

それでも、もうこの家に馴染み、拒絶する心も少しずつなくなっていった。

もうここの大切な姫になっていた。




・・・・・・・

朝、を起こすのは、世話係りの太裳の仕事だった。

様・・・様。起きて下さい。』
「んー・・・たぁいじょ?」

『そうです。起きてください。』

ゆっくりと体を起こし、目をこする。

『おはようございます。』
「おはよう。」



今日は、確か、晴明さんと、昌浩と、吉昌さんが、藤原道長様に呼ばれていて、晴明さんのそばに太裳もついていくんだっけ・・・。

『青龍はここにおりますし、異界には天后も天空もおります。』

「みんないってもいいのに。」

道長様に呼ばれていったあとに、異形を退治するらしく、闘将のみんなはついていくべきだ。

『お前、自分の霊力の高さわかってるのか』

青龍が、眉間にしわを寄せている



「わかってるよ。でも貴方達が守るのは、晴明さんでしょう?」

様。私どもは晴明様も大事ですが、様も大切なのですよ?』

晴明さんいわく、私は神将たちの癒しの存在とか・・・。

「私そんな大層なものじゃないんだけど。」

『そろそろ時間ですね。それでは青龍お願いします。』

『・・・あぁ。』

太裳は隠形していった。





そんな・・・ことできるわけがない。


だって・・・


私は不幸を呼ぶんだもの。



すると、過去がよぎる。

《悪魔の子!!》

頭がズキンと痛む。


『・・・おい・・どうした?』

頭を抱えた私を青龍は気にする。

「なんでもない・・・。」

ちゃん…》

止めてよ・・・・。


《誰も来ないよ。君には誰も助けてくれないんだから。》


やめ・・・・


-見つけた…。闇を背負いし少女よ-


-お前の過去、食わせてもらう-



「イヤァアアアア!」




叫びと同時に、部屋に閃光が散る

結界が破られた。

『ちっ・・・異形か!』

負の過去に惹かれて禍々しいものがここに入り込んでしまった。


「ヤメ・・・」

『おい、しっかりしろ。』

すると、異形のものは姿を現した。

-こんなところにいたか、女神の娘。-

-人間との合いの子よ-

『なんだと?!』



「せ、青龍・・・」
『…お前は人ではないのか』

-そんなことも解らぬか、ずいぶんと落ちたものだ人の式に下った神が-

青龍はを抱えて庭にいく。

途中、異形の姿がはっきりと見える。…狼だ。黒い禍々しいものを纏った狼。

その狼が前足を振ると風が舞う。

それが、青龍の…背中に当たってしまう。


『!くっ・・・』

「青龍…怪我…私の・・・せいで」

自分の過去でこの異形が来てしまった。

ならばこの怪我も自分のせいだ。

『・・・お前のせいではない。天后!』
様?!青龍!』

を…』

青龍は、天后にを渡すと鎌を召喚した。



の周りに天空が結界を張ったようだ。そのそばを天后が異形を睨みながら守っている。

闘将である青龍の邪魔をしてはいけない。そう判断したのだろう。

狼は、風を何度も青龍に叩きつけた。

私は…ただ、それを黙ってみてるしかできなかった

「青龍!」

『ちっ!』

イライラしながら、青龍は必死に鎌で攻撃をする。

どう見ても、苦戦をしている。

「ごめんなさい・・・私のせい・・」
様…。』



自分のせいなのに、わたしは何もできない。
自分のせいで青龍はあんなに傷ついてる。

力がほしい。

彼を助けてあげたい。


誰かー・・・・!

『お前の願い。この高唹が手助けしてやろう。』

「高唹!」
。お前にそれを授ける。使い方は自分でなんとかしろ』

渡されたのは、丸い鏡。
私はとっさにそれを狼に向けた。

すると狼はどんどん力を鏡に封じられる。

-貴様!何を!-

『余所見とはずいぶん余裕だな』

青龍は狼を真っ二つにした。


-ギャァアア!!-



異形は消えていった。
安心しているのもつかの間、

青龍が膝をついた。

「青龍!」

私は急いで青龍のそばに駆け寄った。
私の。私のせいで
涙がこぼれる。

「ごめ・・・なさ・・」
『・・泣くな。』

『青龍、私は晴明様のところに』
『あぁ』

ことの次第を報告しようと、天后は晴明さんのところに向かった。

私はただ、彼の傷ついた体をみて泣くことしかできない。


『これくらい、すぐ治る。』

すると、青龍は珍しくも私の頭を撫でた。

『・・・お前に泣かれるほうが困る。』
「青龍・・・ごめんなさい」

無意識に青龍に抱きついた。
すると暖かい光が包み込む。

傷が・・・どんどん無くなっていく。


『これは・・・』


「青龍傷が・・・!」


どうやら、私の体の中からあふれ出たようだ。

「これ・・・なに?」
『あの異形がいっていたのは・・・本当か?』

「え?」
『女神の娘だと』

私は…青龍には知っていてほしいと思った。

時がきてしまったのだ、それを教えるには、過去を…

でも、青龍は私のせいであんなに傷をいっぱいつけてしまったのだ
教なくては…


「青龍…とりあえず、部屋に話はそれから・・」
『あぁ。』



私の過去


私がここにきてしまった理由


全部・・・あなたに



貴方なら


受け入れてくれる



そう思ったの。


私を撫でてくれたその手が


暖かくてやさしいものだったから


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